ワンダーウーマン 1984~欲望にファナティックになる人々に「本当に大切なもの」を問う映画

時節柄、数少ない年末年始のブロックバスター映画「ワンダーウーマン 1984」を年末に観てきました。

COVID-19の影響により、米国のニューヨーク州、カリフォルニア州の映画館はまだ閉館したままだそうです。そういう状況下で、2020年に公開を予定していたハリウッド大作の「ブラック・ウィドウ」や「ワイルド・スピード ジェットブレイク」は公開延期に継ぐ延期を続けていて、このワンダーウーマンも2度の延期を経て、12月にようやく公開となりました。

ワンダーウーマンは、ボクが大好きな「MCU(マーベル・シネティック・ユニバース)」と対をなす、「DCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)」のシリーズです。マーベル作品ほど網羅していませんが、「マン・オブ・スティール」、「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生」、前作となる「ワンダーウーマン」、「ジャスティス・リーグ」は観た上で、本作ワンダーウーマン 1984の公開を楽しみにしていました。

大きな期待と、映画界の苦しい状況を背負いながら公開されたワンダーウーマン 1984は、今観るべき、時代を表象する内容でもあったので、多少のスポイラー(ネタバレ)を含む感想を記録しておきます。

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ワンダーウーマン 1984~鑑賞後の感想・魅力

さすが「DC映画」なアクションシーン

DC映画はマーベルシリーズを超えて、アクションシーンの描き方がスゴイと評判です。本作もその評判通りのアクションシーンでした。これまでの作品、マン・オブ・スティールやジャスティス・リーグでは、ヒーローとヴィランが都市の街中で派手に戦闘を行い、高層ビルにドカドカと突っ込んで、バカバカと壊れていく様が贅沢に長尺で描かれていました。

それと比較して、本作では都市での戦闘シーンは控えめ。だけど、世界各国の都市で人々が混乱していく様子が描かれるシーンには圧倒されました。戦闘シーンでは、「ワンダーウーマン/ダイアナ」とヴィランである「チーター/バーバラ」の女性同士の戦いが描かれ、しなやかな体躯を活かした戦いの様子は、またこれまでの力強さが全面に出る戦闘シーンとは異なる魅力がありました。加えて、後述するダイアナ幼少期の故郷セミッシラにおけるレースのシーンも圧巻でした。

さすが「ガル・ガドット」なフィーメイル・ヒーローの美貌

ヒーロー映画の大きな魅力のひとつは、強く美しいフィーメイル・ヒーローが登場するところです。例えば、アベンジャーズの「ブラック・ウィドウ/ナターシャ・ロマノフ」や「キャプテン・マーベル/キャロル・ダンヴァース」、それから個人的には「ワスプ/ホープ」が好きです。ヒーロー映画とは違いますが、ゲーム・オブ・スローンズの「デナーリス」「アリア」も。ジェンダー・イコーリティ、女性活躍が叫ばれる時代のナラティブを反映した、強く美しいフィーメイル・ヒーローの活躍を見ることは本当に胸がすく思いです。

そんな数多くいる魅力的なフィーメイル・ヒーローの中でも、ガル・ガドット演じるワンダーウーマン/ダイアナが、ボクの中の現在ナンバーワンです。特に前作ワンダーウーマンで、文明から閉ざされた故郷の島から文明社会に出たばかりの、強く聡明ではあるけれど、未成熟で未完成なワンダーウーマンの姿がすごくよかったです。本作では、ちょっと鼻につく完璧な美人という描かれ方からはじまり、でも実は弱さや愚かさを持っている女性であったことが明らかになる部分と、そこから再び飛び立つ場面を。またとびきりに魅力的に演じていました。

ワンダーガール(ダイアナの幼少期)を演じる「リリー・アスペル」

前述の故郷セミッシラにおけるレースのシーンで、幼少期のワンダーウーマン/ダイアナを演じるリリー・アスペルもとても魅力的でした。負けず嫌いで鼻っ柱が強い女の子、レースに勝つために知恵と工夫をこらし、でもちょっとした不正を犯してしまって師に叱咤されたりもする。そんな場面では落ち込んだりもするけれど、それでも力強い眼差しで前を見据える。今の世界で不条理と戦う幼く若い女性たちにも勇気を与えてくれるワンダーガールだと思います。

今の世界で不条理と戦う強く美しく、そして悲しい女性たちへのメッセージ

2020年は世界の不条理と戦うZ世代の女性たちに心を奪われた一年でした。彼女たちは世界を今よりも良い形にしようとがんばるけれど、それには大きな壁が多くありすぎてうまく進まないことがたくさんあります。そんな弱さや脆さもすべて全世界に共有したりされたりしても、彼女たちは前に進んでいます。映画の中で、最初は完璧だと思われたワンダーウーマン/ダイアナも、自らの欲望にファナティックになるが故に、弱さや脆さ、愚かさが表面化される場面がありました。

ダイアナも弱さを振り切り前に進み、困難を乗り越えて、世界を守りました。そんな不条理と戦う強く美しいワンダーウーマンの姿が、少しでも苦境に立たされる女性たちの背中を押してくれることになればいいと、そんな風に思います。

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公共の益と本当に大切なものは何かを、今だから考えよう

本作のテーマは、自らの願望や欲望、目の前のチャンスを掴もうとファナティックになっている人々に「落ち着いて本当に大切なモノを見つめ直しなよ」と、問いかける内容です。COVID-19や気候変動などの問題が山積し、資本主義経済の発展だけじゃなく、公共の益を考えなければならない今、噛み締めて観ても良い映画だと思います。

2020年の映画について

ワンダーウーマン 1984 iMax

ワンダーウーマン 1984で2020年の映画館納めになりました。2020年に劇場で観た映画は「TENET テネット」「劇場版 鬼滅の刃」「ワンダーウーマン 1984」のたった3本しかありませんでした。COVID-19の影響で、飲食・旅行・エンタメ業界は本当に苦難の一年だったし、今なお続く苦しみです。そんな中でも、鬼滅の刃は日本における歴代興行収入ランキングを更新したりもし、そしてその作品や今ヒットする理由の背景にあるテーマなどを考えながら作品を観る機会にもなりました。

そして、映画館で映画を観る機会が貴重になったおかげで、せっかくの映画館なので良いシステムの劇場で観ようと、新たな拘りも生まれました。2020年に観た3本はいずれもIMAXの劇場で、中でもテネットは、日本最高峰のIMAXレーザー/GTシステムの劇場まで足を運んで観ました。その体験は、2020年に唯一といってよいライブ体験でした。

2021年も映画界には厳しい状況が続くかもしれません。でも、だからこそその体験への期待感や、テーマに対する向き合い方の深度が深まるとも思います。また、噛みしめながら良い映画を観ようと思います : )

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この記事を書いた人

マーケティングに関わる仕事に20年以上携わっています。感銘を受けたポップカルチャーをマーケティング視点で記録したり、日々の暮らしや身に着けているもの、健康・投資について記録するためにブログを活用しています。

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