SDL:サービス・ドミナント・ロジックに関して、この1ヶ月で感じたことがあったので取り上げます。サービス・ドミナント・ロジックとは、これまでは企業は生活者にモノを購入してもらい、モノによるつながりを構築していたところを、企業が提供する商品を、有形か無形か、モノかサービスかに関わらず、すべての経済・経営活動を包括的に捉えようとする考え方です。
2000年代前半から言われていた概念ですが、フィリップ・コトラーが改めてマーケティング5.0の時代の、人間中心のマーケティングを実現するための影響要素として、デザイン思考・デジタライゼーションと並列でサービス・ドミナント・ロジックを挙げています。モノ(GDL)から、サービス(SDL)への移行するために、例えば「商品からサービスへ」「製品からエクスペリエンスへ」「機能からソリューションへ」「対市場からWith市場へ」というコンセプトが説明されています。
そんなSDLへの移行の具体的な事例について、今回のAppleの決算発表で感じることがありました。11月2日に発表された業績では、モノの販売が不振の中、サービスの売上が全体の2割以上を占めるようになっていました。Appleのサービス部門は、アプリ販売や動画、ゲーム、金融といったサービスの生態系を広げていき、徐々にGDLからSDLに移行していきました。加えて、SDLのコンセプトにあったように、対市場という考え方から、他者のサービスをプラットフォームに取り込み生態系を広げていくWith市場のコンセプトにも沿う形となっています。それにより、製品からエクスペリエンスへ、機能からソリューションへと周辺市場とともに移行してきた結果が、モノが売れない環境でも、サービスが業績を下支えする基盤となりました。
Appleの業績もそうですが、新しいモノが売れなくなってきています。その背景に、レコノミーの時代というふるまいの変化もあるのではと思います。リユース、リサイクル、リペアといった経済行動をまとめて表現する言葉ですが、実際にアメリカでは「修理する権利」が法律で制定され古い機種をリペアして使い続けるユーザーも増えています。間違いなくGDLからSDL、サービスでつながるという必要性が高まってきている中、その代表的なベンチマーク先としてAppleに学ぶことが多いのではと思います。
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