持続可能な社会をつくるために、利己的ではなく利他的な姿勢で行動することが求められています。そうした人びとの行動を予測可能な形で良い方向に変えるための行動経済学「ナッジ」が様々な施策に取り入れられていてとても参考になります。ナッジは親ゾウが子ゾウの背中を鼻でちょっと押すように、選択を制限したり大きな経済的インセンティブを与えたりすることなく、良い行動を促します。
例えば、税金や罰則はナッジではなく、体に悪い食べ物を禁止するのもナッジではありません。スーパーに並んでいる果物を目の高さ、ゴールデンゾーンに置くのはナッジです。小売店に限らず、商品づくりやマーケティングの分野でも使える要素であるため、各種事例を参照して考えてみたいと思います。
スウェーデン:思わず登りたくなる階段で「健康促進」
スウェーデンのストックホルムにある駅で行われた実験では、エスカレーターの隣にある階段を鍵盤に見立て、足を乗せると実際に音が鳴る仕掛けを施すことで「楽しそう」「登ってみたい」という気持ちを引き出すことに成功しました。人びとに自主的に運動を促し、健康につなげるための行動をナッジした事例です。
Google:小さなお皿に変えて
グーグルは福利厚生が豊かなことが有名で、社員食堂は食べ放題であることも良く知られています。しかし、食べ放題なために、多くお皿にとってしまい、残してしまう人も多くいました。そこで、従来より約2.5cm小さい深さの皿を使い始めたところ、無意識のうちに食べ物を30〜50%少なく取るようになり、食べ残しによる食品ロスを最大7割削減することができました。
千葉市:男性の育休デフォルト化
千葉市では男性の育休は申請しないと取得できないことがデフォルトでしたが、何も申請しなければ育休を取得するということをデフォルト化し、取得率が2013年度の2.2%から2019年度には92.3%と大幅に上昇しました。デフォルトを変えることでナッジした事例です。
行動経済学では、プロスペクト理論や現状維持バイアス、コンコルド効果など、研究の結果わかってきた有効なナッジが様々あります。あくまでも良い行動を促すことに絞って、こうした行動経済学の要素をマーケティングに活かすことを考えてみたいです。
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