著者のサイモン・シネックのことはTEDのプレゼンで知って、概念的な話をとても腹に落ちる内容で説明していたのが興味深くて、著書も読んでみたいと思った。
サイモン・シネックは企業(もしくは我々個人においても)が自身の行動を説明するときには、3段階のレベルがあり、それがWHAT、HOW、WHYである。それぞれ、以下のように説明ができる。
WHAT
企業や組織は、自分のWHAT(していること)がわかっている。
HOW
自分がしていることのHOW(手法)を知っている人や企業も、なかにはある。「価値観に差異をもたせる」「独自の工程」「ユニークな販売計画」など、よそとは違う方法、よりよい方法をとるのだ。これをHOWと呼ぶ。
WHY
自分がいましていることを、しているWHY(理由)。これを明言できる人や企業は少ない。なぜ、あなたの会社は存在しているのか?なぜあなたは毎朝、ベッドから這い出し、出勤しているのか?
理屈は分かる。でも会社や自分のWHYを言葉にすること、形にすることはとても難しい。この本のすばらしい点は、輝かしい成功を体験した企業のWHYをウェットに紹介している点である。これだけで、インスパイアされ心が奮い立たされる。
アップルの場合
現状に挑戦し、他者とは違う考え方をする。それが私たちの信条です。製品を美しくデザインし、操作法をシンプルにし、取り扱いを簡単にすることで、私たちは現状に挑戦しています。その結果、すばらしいコンピュータが誕生しました。一台、いかがです?
サウスウエスト航空の場合
安くて、愉快で、シンプル。それが、サウスウエスト航空が実践したHOWだった。かれらはこうして、庶民のために戦う闘士となった。その結果は、かれらの言動に具体的にあらわれた。商品、従業員、文化、マーケティングに。「あなたはいま、自由に国じゅうを動きまわれるのです」と、広告は訴えた。それは単なるキャッチフレーズではなかった。それは、かれらの理念だった。
マイクロソフトの場合
コンピュータ革命を生き抜いたビル・ゲイツは、私たちがもっと生産性を上げ、もてる力を最大限に発揮するために利用するテクノロジーとして、コンピュータが完璧だと考えている。その信念が「あらゆるデスクにコンピュータを」という彼のビジョンを生み出し、実現させた。
ウォルマートの場合
サム・ウォルトンには大切な目的、理念、信条があったからこそ、仕事に邁進した。なによりもウォルトンは人間を信じていた。人の世話をすれば、相手もまた自分の世話をしてくれると信じていた。ウォルマートが従業員、顧客、地域に多くを与えれば与えるほど、従業員、顧客、地域がより多くのものをウォルマートに返してくれるはずだ、と。「われわれはみな、一丸となって働いている。それが秘訣だ」と、ウォルトンは言った。
AOLの場合
かつて、AOL社は人々をインスパイアしていた。こんにちのグーグルのように、就職先として一番人気の企業だった。「弊社はビジネスのルールを変えています、この驚嘆すべき企業で一緒に働きましょう、ぜひヴァージニア州にお越しください」と、AOLは言いたてた。そして、それは本当だった。
いずれの言葉もエピソードも、我々の心をかきたてるものです。アップルを例に取ると、確かに人々はアップルのWHATではなくWHYを買っている。
現状に挑戦し、他者とは違う考え方をする。それが私たちの信条です。
製品を美しくデザインし、操作法をシンプルにし、取り扱いを簡単にすることで、私たちは現状に挑戦しています。
これに続く言葉は「コンピュータ」でもよければ「MP3プレーヤー」でもよくて「携帯電話」でもいいのです。だから、私たちはアップルからMacbook、iPod、iPhone、を買うのです。WHYを明確化できているからアップルは、コンピュータだけでなく、音楽機器、携帯電話のそれまでは門外漢の分野においても、一気にトップを取れる商品を開発・販売することができるのです。
モノを売ること、コトを売ること。マーケティングにおいてWHYから語り始めることの大切さを偉大な企業のケーススタディで腹に落とすことができました。
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[…] ビスの存在価値にまでさかのぼってなんて議論や提案はしづらいけど、やっぱりクライアントとはこういう部分こそ握っておきたい。それは「Whyからはじめてみる」ことでもあると思う。 […]