マーケティングに関わる仕事を20年以上続けています。折に触れて、マーケティングの変遷に触れるとき、考えるとき、その道しるべとしてきたのが、マーケティングの父「フィリップ・コトラー」がまとめてきた、「マーケテイング×.0」の整理です。縦横無尽に広がるマーケティングの全貌をつかむことはできないけれど、その突端に触れる上で、こうした整理はとてもありがたく貴重です。
それができるのは、コトラーの変化をつかむ、ケースを集める「聞く力」と、それらを体型立てて分かりやすく伝える「まとめる力」の力強さがあってこそだと思っています。ご本人の年齢的にも、内容も、その集大成になると思われる、「マーケティング5.0」を自分なりの解釈も加えながら記録していきたいと思います。
ここでは、世界的にやや食傷気味になってきている「SDGs」という取り組みについて、そしてそれらに目配せしつつ、これからの世界を生きて創っていくZ世代以降の若者のふるまいについてまとめておきます。
マーケティング5.0 ―― サスティナブルな成長のために内部からの圧力を
マーケターが今日直面しているおもな課題の一つは、雇用から思想、ライフスタイル、市場に至るまで、人間の生活のあらゆる面で極端な二極化が起こっていることだ。その根本原因は、社会経済階級の最上層と最下層の格差の拡大である。中間の市場は、下降するか上昇するかのどちらかになって、消滅し始めている。
コトラーのマーケティング5.0
あらゆるものが二極化しているとき、ブランドや企業のポジショニングを決める意味のある方法は〈包摂性とサステナビリティという〉 二つしかない。二極化は企業が活動できる市場を限定する。だが、もっとも重要な点として、二極化は、とくに経済が鈍化し、プレーヤーが急増している中で、成長の機会を限定してしまっている。
持続可能な開発計画(SDGs)と整合する包摂的でサステナブルなマーケティングは、よりよい富の分配を通じてこの問題を解決する。そして、それによって社会は元の形に戻るだろう。企業は人間中心というコンセプトを自社のビジネスモデルに組み込んで、目的を持って社会に投資し、同時にテクノロジーを活用しなければならない。テクノロジーは進歩を加速し、すべての人に機会を開くことによって、大きな役割を果たすからである。
コトラーはブランドや企業のポジショニングを決める方法は「包摂性とサスティナビリティ」という2つしかない。と力強く訴えます。そしてその大きな2つの要素を細分化して、道しるべとしてくれているのが「SDGs」であり、その分類を明示してくれています。
成長と分配。どこかの国のリーダーの言葉のようですが、SDGsを道しるべとして示してくれると腹に落ちてきます。私なりにマーケティングの目的とは、今よりも少しずつ良い社会を創っていく。ことだと信じています。環境的・人道的に取り組もうとすると実現不可能だと思えてしまう取り組みを少しずつ形にしていくことこそ、マーケターの腕の見せ所です。すべては、人間中心に。そう行動していかないと、未来に続く組織になれないこともコトラーは示します。
外部のトレンドは社内の動きも映し出す傾向がある。社会的インパクトは比較的若い人材の心に強く響く。企業は従業員の要求に応えて、企業価値に社会的使命を盛り込むようになっている。労働力人口の中でもっとも人数が多いY世代の従業員は、長年、社会の変革を促進してきた。彼らは顧客として購買力を使うことによっても社内から社会変革を唱えることによっても、影響力を行使する。また、今ではZ世代が労働力人口に参入し始めており──まもなく新しい多数派になるだろう──社会的、環境的に責任ある慣行を求める社内からの圧力も高まっている。
コトラーのマーケティング5.0
若い世代の従業員を引き付け、維持するためには、企業の価値観がこれまで以上に重要である。選ばれる雇用者になるためには、企業は従業員に対しても顧客に対して使うものと同じストーリーテリング・ナラティブ〈対話をしながらストーリーを共創していく手法〉 を使う必要がある。企業の価値観は、手がけている事業とうまく整合しているとき、もっとも本物だと感じる。
グレタ・トゥーンベリ、エマ・ゴンザレス、アグネス・チョウ。今よりも良い社会を創るために声を上げてきた彼女たちにボクは心を打たれています。時折、大学生に講義をする機会があり、そのたびに彼女たちの行動と未来を創るのはあなたたちであることを訴えていますが、どこまで心に届いているのかは分かりません。キレイごとでいいんだ。と言い聞かせながらやっていますが、なかなか難しいことでもあります。しかし、コトラーはすでにY世代とZ世代のアクティビズムははじまっていて、より強くなっていくだろうと言います。
あと10年、自分が生き残るために意思決定をする政治家や経営者に世界のかじ取りを任せていてはいけないということは若者でなくても理解できると思います。しかし、なかなかそれが変わらない。だからこそ、内部からの圧力が必要です。ボクにできることは少ないけれど、大学生に社内の20代スタッフに。少しでもそんな未来のことを考える機会を与えられたらと思い、行動していこうと、改めてコトラーに教えてもらいました : )
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