コトラーのマーケティング5.0 ―― 2020年代は「分断」と向き合う10年になる

マーケティングに関わる仕事を20年以上続けています。折に触れて、マーケティングの変遷に触れるとき、考えるとき、その道しるべとしてきたのが、マーケティングの父「フィリップ・コトラー」がまとめてきた、「マーケテイング×.0」の整理です。縦横無尽に広がるマーケティングの全貌をつかむことはできないけれど、その突端に触れる上で、こうした整理はとてもありがたく貴重です。

それができるのは、コトラーの変化をつかむ、ケースを集める「聞く力」と、それらを体型立てて分かりやすく伝える「まとめる力」の力強さがあってこそだと思っています。ご本人の年齢的にも、内容も、その集大成になると思われる、「マーケティング5.0」を自分なりの解釈も加えながら記録していきたいと思います。

コトラーはマーケティング5.0が登場する時代背景には「分断」があると諭します。

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マーケティング5.0は3つの大きな課題を背景に登場する

マーケティング5.0は、世代間ギャップ、富の二極化、デジタル・ディバイドという三つの大きな課題を背景に登場する。

態度や選好や行動が大きく異なる五つの世代が地球上でともに暮らしているのは、今が史上初めてだ。ベビーブーム世代とX世代は、まだ企業でリーダー的地位のほとんどを占めており、他の世代より高い購買力を持っている。しかし今では、デジタルに精通しているY世代とZ世代が、最大の労働力人口はもちろん最大の消費市場も構成している。ほとんどの決定を下す年配の企業役員と、もっと若い管理職や顧客たちとの断絶は、重大な障害になるだろう。

マーケターは慢性的な不平等と不均衡な富の分配という、市場を二極化させる問題にも直面するだろう。高収入の仕事を持つ上流層は増加しており、ぜいたく品市場を活気づけている。もう一方の極であるピラミッドの底辺も拡大しており、低価格の値打ち品を求める大きなマス市場を形成している。ところが、中間の市場は縮小しており、消滅しつつあるとさえいえる状態で、企業は生き残るために上流層か下流層のどちらかにターゲットを移さざるをえなくなっている。

ボクは「分断」には人よりも意識的だと思っています。理由はポップカルチャーが好きで注目しているから。ポップカルチャーでは、人種・地域による分断、性差による分断、格差による分断がテーマとなることが多く、またそうした作品に特に注目しています。

コトラーの示す3つの大きな課題の中には、その一つ「富の二極化」が含まれています。経済・権力が生む格差は、時にグローバル資本主義経済を加速させ、またときにそれを否定してナショナリズムに走る保守派の台頭へとつながります。マーケティングにおいても、経済・権力を持つ大企業がその解消へと目配せを行い、ブランドアクティビズムへと舵を向けないと、生活者にボイコットされる対象となってしまいます。

そしてコトラーは、ボクはあまり意識していなかった別の2つの分断を指摘しています。世代とデジタル・ディバイドです。後者のデジタル・ディバイドは、日本においても例えばSNSは届かないけど、友人同士のLINEにはめちゃくちゃ依存しているマイルドヤンキーと呼ばれる属性で指摘されたりしました。ネット広告が効率的ではあるけれど、マス広告が終わるのは今ではない。ということが示唆できます。

そして世代間の分断。気候変動の活動家「グレタ・トゥーンベリ」をはじめとしたZ世代のアクティビストを引合いにして、世代間闘争の時代という大きな文脈を感じたことはありましたが、コトラーが指摘するのは「5つの世代が地球上でともに暮らしているのは、今が史上初めてである」というより身近なイシューです。マーケティングにおけるこの課題は本書によって強く意識を持つことができました。大きな不満がなくなってきた現代、各世代が持つ小さな不満を解消し、分断の溝を埋めることもマーケティングの役割であることを認識しました。

2010年代から意識されてきた分断は、2020年代に入りより加速しています。地域による分断が進み、戦争が起こりました。ひとつの国の中でも政治的な分断が進み、右派・左派が分断されています。分断の解消は2020年代に取り組むべき大きな課題であり、マーケティングもそのひとつの役割を担っていると意識して行動していきます : )

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この記事を書いた人

マーケティングに関わる仕事に20年以上携わっています。感銘を受けたポップカルチャーをマーケティング視点で記録したり、日々の暮らしや身に着けているもの、健康・投資について記録するためにブログを活用しています。

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