先日社内セミナーで発表したコンテンツの一部を記録しておきます。
COVID-19禍に対面営業がしづらくなった当社の営業施策として、セミナー担当をしています。毎月、クライアント向けに「今、注目するべきテーマ」を発表しています。それを「時代のナラティブ」と呼び、「全世界の人々が今、自分ごととして話すべきテーマは何か」を発表しています。大それた内容ですが、、一応好評を得ています。
そうした「時代のナラティブ」を掴む方法を、社内にも共有すべきだ。ということで、当社のメンバーに対して社内セミナーした内容の一部です。ボクが普段から行っていること、その視点をまとめてみたのですが、まあまあ参考にしてもらえる内容かなと思って。。ここでも残しておきます。実際にセミナーのために作ったスライドを使って説明します。
クルト・レヴィンの法則 ―― 人のふるまいは「個性」と「環境」で決まる
入口で「クルト・レヴィンの法則」を説明します。古い法則ですが、人の行動を決めるのは「個性」と「環境」によると説明し、時代のナラティブ、つまり現在からこの先に人々が自分ごととして感じることは、環境にも大きく起因するので、環境を見つめようと伝えます。ボクの会社はマーケティング・リサーチを仕事にしているので、みんな「生活者(個人)」を見つめることには慣れているのですが、よりマクロな視点も持とうという問題提起です。
そして、その方法ですが、「メディアを読め」と「稀代のナレーターの作品を観ろ」としています。当たり前かもしれませんが、それぞれの具体的な行動として、日経新聞のクリッピングとヒット映画の鑑賞をオススメしています。どんなアウトプットになるのかを説明します。
日経新聞のクリッピングは「エバーノート」を活用し、タグ付けする
ボクは日経新聞の電子版(Webではなくて、アプリで新聞形式で読めるもの)を毎朝欠かさずに読んでいます。年始に日経新聞からメールが来ましたが、2020年は5,592記事を読んだそうです。そして、そこで注目した記事をエバーノートにクリッピングしています。クリッピングした記事は約1,800記事です。
少し前までは、日経新聞アプリから直接エバーノートに記事を送ることができたのですが、改悪がありそれができくなりました。なので、今はアプリでクリップしたものを、ブラウザの日経電子版のmyページで開き、コピペしてエバーノートに貼る。という手間をかけています。本当に残念な仕様変更です。。
そして、クリップした記事にエバーノートのタグ機能を使ってタグをつけていきます。その結果が上のスライドです。エバーノートではタグ付けしたキーワードの数を見ることができます。このタグを見ていると、社会が今何を話題にしているのか、その中心が見えてきます。今は、例えば「脱炭素」「大統領選」「気候変動」「DX」「米中分断」「女性活躍」「テレワーク」「ラストワンマイル」「水素」などに注目していることが分かります。
こうした方法で、社会が話ししたがっている時代のナラティブの一側面を確認しています。
2019年の各国のNo.1ヒット映画で時代のナラティブを掴む
ポップカルチャーは時代の空気感を映す鏡だと思っています。それらを見聞きすることで、メディアとは違う側面の時代のナラティブを確認します。音楽や小説、マンガ、ゲームなどポップカルチャーは数々ありますが、上記のスライドに書いた通り、特に映画は巨大企業以上の予算をとてもとても優秀な監督・ショーランナーが握り、時代のナラティブを読みながら創るものであり、特別な環境で音楽や小説よりも何倍も多くの人たちに共有される時代を表象するコンテンツだと思っています。
例えば、一昨年2019年に日本と韓国、アメリカでNo.1ヒットとなった映画を観てみると、時代が何を語ろうとしていたのかが見えてきます。
2019年、日本映画の最大のヒット作品は「天気の子」でした。作品の舞台がそのまま「気候変動」に直面する日本でした。それに加えて、貧しい若者の格差問題や大人との世代間闘争が描かれていました。
韓国は「パラサイト」です。世界的にも最大の評価をされて、韓国映画であるにも関わらず、オスカーを受賞し大きな話題となりました。パラサイトの大きなテーマは「格差社会」ですが、その格差を表象し、格差をより大きなものにする要素として、気候変動による洪水被害が描かれました。
そしてアメリカは「アベンジャーズ:エンドゲーム」です。これまで「アバター」が持っていた、世界の興行収入ランキングを更新し、世界で最もヒットした映画になりました。11年間・23作品をかけて描かれたアベンジャーズシリーズの大きな区切りとなる作品です。11年間かけて集まったヒーローが最後に戦うのが「気候変動」を表象するヴィラン「サノス」でした。「世界中の力を結集して戦うべき相手は気候変動だ」そんなメッセージを受け取りました。
そう、2019年は「気候変動」が一番のテーマでした。これはCOVID-19禍を経て、より大きな時代のナラティブとなり、EUが、アメリカのバイデン政権が、日本の菅内閣が、一丁目一番地の社会課題として取り扱うようになりました。
2020年の各国のヒット映画で時代のナラティブを掴む
2020年のヒット映画も見てみます。2020年はCOVID-19の影響で特に大作映画の延期が相次いだ一年でした。その中でも。ということですね。日本は空前のヒットとなり、「千と千尋の神隠し」の興行収入を破った「鬼滅の刃」です。ただ日本のヒット作品、鬼滅の刃はこのあとの他国のメッセージとはちょっと別ですかね。
韓国は「82年生まれ、キム・ジヨン」です。本国韓国では、2019年末公開の映画ですが、日本では2020年10月に公開が開始されました。ボクはこの映画だけは未見なのですが、女性が担う重圧と生きづらさを描いたジェンダー差別とメンタルヘルスへ問題提起する映画です。
アメリカ映画では「ワンダーウーマン 1984」です。自らの欲望にファナティックになる人々に、冷静になって周り見渡し本当に大切なものに気づきなよ。と利他主義や公共の益を訴える映画でした。力強く美しい主人公が人々の欲望と戦う、女性活躍の時代を現す映画でもあります。
番外編ですが、映像作品をもう一作例として出しました。ネットフリックスのリミテッドシリーズドラマ「クイーンズ・ギャンビット」です。ネットフリックスのリミテッドシリーズで一番観られた作品になりました。チェスの世界でローティーン女性が男性をバッタバッタと倒していく女性活躍を描いたドラマです。
どうでしょう。これらの作品を眺めてみて、2020年は「女性活躍」について語られた1年であったと言えるのではないでしょうか。
新聞と映画をつなげてみると時代のナラティブが見えてくる
ということで、時代のナラティブを感じるための2つの方法でした。シリアス(真面目)なメディアと、ウォーク(意識の高い)なポップカルチャーをつなげてみると時代が語りたがっているテーマ(ナラティブ)が見えてくる。そんな実感を感じてもらいたく、社内セミナーでは話しをしました。これに企業や個人の欲求やジョブ(用事)を重ねるとふるまいが決まってくる。そんな風にボクは考えて、マーケティングに携わり、日々の生活にも活かしています。
メディアの情報も、ポップカルチャー作品も、こうした視点で観てみると、また楽しいです : )
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