映画「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」を観ました。劇場はTOHOシネマズ錦糸町オリナスです。
マーベルのヒーローたちの中でも大好きなスパイダーマンのシリーズ。アニメ映画では前作の「スパイダーマン:スパイダーバース」もとても楽しく観ました。主人公の「マイルス」を中心に、数々のバースの特色あるスパイダーマンが登場するアニメユニバースの第2弾です。とにかく目にうれしい映画シリーズで、やっぱり映画館で観て良かったと思う作品です。
マルチバースの設定は、なかなかに取っ散らかったストーリーになりがちですが、今想う作品の背景・ストーリー・撮影と編集について記録しておきます。
スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース ―― 作品の背景について
スパイダーマンシリーズに通底する「大いなる力には、大いなる責任が伴う」というテーマに加えて、「自由意志と決定論」が本作品の背景には流れています。スパイダーマンには必ず、避けられない悲劇が起こる。それを本作では「カノン・イベント」と名付けています。そうです。スパイダーマンが必ず「多くの人を救うのか、親愛なる一人を救うのか」という場面に直面することは、決定論で定められたイベントだったということです。スパイダーファンにとっては、なかなかに踏み込んだ設定です。そして、スパイダーマンバースの秩序を保とうとする多くのスパイダーマンは、そのカノン・イベントという決定論を受け入れ、その秩序を守ろうとしています。そんな中、マイルスは一人、多くの人も親愛なる人も守る。という自由意志を貫こうと奮闘します。
しかし、作品に通底するテーマや因習を更新していこうとするのがこれからの若者・ヒーローの役割なのかもしれません。マルチバースという多様性を受け入れつつも、しかしバースを越えて因習を守り、秩序を保とうとしてしまう大衆の心理を乗り越えていくこと。利他を追求し、利己を押さえ続けてきたスパイダーマンがそのふるまいを更新していくさまが本作の見どころであり、ファンとしてもつらいところでもあります。
スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース ―― 作品のストーリーについて
物語はマイルスとともにもう一人のナラティブを担う「グウェン」のバースからはじまります。以前、マイルスのバースでスパイダーマンのひとりとしてともに戦ったグウェンは、自身の世界でもヒーローであることを隠しながらヴィランから社会を守っていました。しかし、街を守る警官である父親から、スパイダーマンは殺人者であるという疑いをかけられていました。身分を隠しながらも父からの疑いを解こうとするグウェンですが、あるヴィランとの戦いの中、現場に居合わせた父親から銃を向けられてしまいます。覚悟を決め、正体を明かすことを決めたグウェンですが、スパイダーマンのマスクを脱いだグウェンを見ても、父親は殺人の疑いを解こうとはしませんでした。落胆するグウェンを、別のバースからきたスパイダーマン「ミゲル」と「ジェシカ」は別のバースへと導きます。
そのころ、マイルスも身分を隠しながら日々スパイダーマンとしてヴィランと戦っていました。しかし、やはり家族との間に溝が生じています。学校との大切な面談も、父親の誕生日パーティも、ヒーロー業に努めるがゆえに疎かにしてしまい、家族からの信頼を損なってしまいます。現実社会とヒーローであることのギャップに打ちひしがれるマイルスですが、そのときポータルが開き、グウェンが彼のもとに現れます。再会を喜び、他の人には話せない悩みや苦痛を分かち合う2人。境遇を共有できるグウェンとの会話で少し元気を取り戻したマイルスですが、グウェンに連絡が入り、彼女は慌てて飛び出していきます。
グウェンは別のバースのスパイダーマンとともに、マイルスの世界にいるヴィラン「スポット」を追っていたのでした。以前、マイルスとも戦ったスポットはマイルスとの戦いを経て、マルチバースを行き来できる能力を手に入れていました。スポットはポータルを開き別のバースへと移動をしていきます。それを追うグウェンと、彼女を追ってやってきたマイルスも同じポータルに飛び込むのでした。
ポータルの先のバースはムンバッタン。その都市をスポットから守るために、マイルスとグウェン。それから、マルチバースのスパイダーマン「スパイダーマン・インディア」と「スパイダー・パンク」が加わり奮闘します。その過程で、マイルスはインディアの恋人「ガヤトリ」の父を救出したことで、ムンバッタンに異変が起こります。そこに駆け付けたジェシカに連れられて、スパイダーマンたちはスパイダー・ソサエティに向かいます。
無数のスパイダーマンたちが活動するスパイダー・ソサエティで、マルチバースの監視を行うミゲルから、スパイダーマンにとっての避けられない悲劇「カノン・イベント」について教えられるマイルス。加えて、ムンバッタンでその決定論をマイルスが侵害してしまったこと。さらに、自分自身にもそのイベントが迫っていることを知らされます。スパイダーマンのジレンマを突き付けられるマイルスですが、彼は自由意志を尊重します。それによって、ソサエティの面々に拘束され、追われる立場となってしまいます。
数々のスパイダーマンに追われながら、自身に迫るカノン・イベントを阻止しようと行動するマイルス。ソサエティからポータルを抜け、マルチバースに旅立ちます。グウェンは悩みながらも、マイルスの意思を尊重し手助けをしますが、その行動によってミゲルに自分のバースに強制帰還させられてしまいます。そこで、父と再開し、しかし決定論であるはずのカノン・イベントの抜け穴を感じ取ります。グウェンもスパイダーマンに課せられた決定論を打破するべく、仲間となり得るスパイダーマンたちを集め、マイルスの助けになれるように動き出します。マイルスとグウェン、スパイダーマンに課せられた決定論との戦いは次の物語へと引き継がれていきます。
スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース ―― 撮影と編集について
カラフルで多様性に溢れる、目にうれしいアニメムービーでした。マルチバースの表現はとても難しいのですが、アニメだからこそ、輪郭やカラーのタッチを変えることができ、それによってバースの違いや、バースを越えたキャラクターが交わる違和感を感じることができます。マルチバースはアニメだからこそ表現できる設定なのかもしれません。そして、なによりグウェンがすんごくキュート。マーベルのフィーメイルヒーローの中で、一番魅力的なキャラクターではないかと思います。スパイダーバースシリーズの恐らく完結となる次の映画も、必ず映画館で観ようと思わせてくれる撮影と編集でした。
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