株式会社とは異なる「DAO(分散型自律組織)」と呼ぶ組織形態を作って新事業創出につなげる動きが広がっています。スポーツや教育の分野で投資家、ファンなどの関係者に、仮想通貨などを用いて投資を呼び込みながら、長期的な視点で事業やチームを育成・成長させていく取り組みです。
例えば、サッカーJリーグのアビスパ福岡は同社のDAOに参加するためのトークンを発売し、購入者はクラブの運営やイベントの企画に参加できる仕組みを本年より始動しています。トークンはブロックチェーンで発行し、資金の流れなどを記録するとともに、取引履歴はメンバー同士が把握でき、透明性の高い運営につなげようとしてます。DAOの企画では、トークンの所有者が投票で意思決定を行い、スタジアムの魅力度向上や新グッズの開発などに取り組みます。応援するチームの運営に参加できることもDAOの魅力です。もちろん、応援する人だけでなく、投資や新しいテクノロジーに関心がある人などからも参加を募ることができます。
イギリスの香水会社Rook Perfumesは、DAOを使って熱心な支援者と香水の開発を行っています。同社は世界初の「フレグランスDAO」を創設しており、トークンの購入者は、アプリでの会話、学習セッション、ゲーム、オフラインイベントなど4ヶ月間の実習に参加。体験の最後には、共同でデザインした香水のボトルが贈られます。さらに、開発した香水が販売されれば、売上からロイヤリティを得ることもできます。
マーケティングにおいては、生活者の声や行動を注意深く観察し、彼らの満足に応える商品・ブランドづくりを進めることが大切ですが、こうしたDAOのようなテクノロジーを使えば、顔が見える熱心な支援者の真剣な声をブランド・商品に反映できるのではないでしょうか。その時には、意思決定が投票制で成されることにリスクが生れる可能性もあります。しかし、レス・イズ・モアが求められる、レコノミーな経済環境の中では、そうした熱心な支援者にマーケティングに参加してもらうことが強みになってくるのではと思います。
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