映画「BLUE GIANT」を観ました。劇場はTOHOシネマズ日本橋のTCX+ドルビーアトモスです。
原作には一切触れたことがないけれど、2月の公開からなんだかずっと気になっていて、ゴールデンウィーク中にもまだ上映していると知り、観に行こうとしたけどタイミングが合わず。というか、行こうと思っていた会場・時間がソールドアウト。。縁がなかったかなと思って、配信を待とうかと思っていたけど、仕事で外出・直帰できるなと思ったときにふと調べてみると、今まで行ったことがなかったTOHO日本橋でちょうどよい時間に上映されていることが分かり、ようやく劇場で観ることができました。
そして、劇場で観れて本当に良かった。イヤホンでは感じられない、音による感動をしっかり体験できました。シンプルな言葉でしか語らない主人公の、その現状へ不満と前向きさと一途な想いが、劇場を包み込む音楽を体験することで伝わってきました。とても良かった。なので、本作の背景とストーリー、撮影と編集についてまとめておきます。
BLUE GIANT ―― 作品の背景について
主人公の「宮本大」はどうしていつも前に進もうとしているのだろう。そして、そのアティチュードがどうしてこんなに心を震わせるのだろう。マンガやアニメの主人公で前のめりで後先を考えずに天真爛漫に振舞うキャラクターは他にもたくさんいます。でも、それらと違って大に惹かれるのはなんでだろうか。そんなことを考えて、ふと思います。
そうだ、彼は無邪気な前向きさではなく「現状への不満」が原動力になっているからだ。そんなことに気が付きました。このままじゃだめだ。今は前に進まないといけない気がする。そんなセリフを想い出します。現代は「不満がなくなった時代」と言われています。一方で、みんな「不安を感じている時代」だとも言われます。かつてブラック企業に不満を持って辞めていった若者は、ブラックな状況が解消されると将来を不安に感じて仕事を辞めるのだそうです。
失敗しても、評価されなくても、大は不安を感じることはありません。ただただ、いつでも今でも現状に満足しない、不満を感じているのです。かつてのヒーローたち、あしたのジョーや巨人の星もそうだったのかもしれません。不安に足をからめとられるな、不満を持って前に進め。分断と不寛容に溢れた現代社会に、そう訴えてくるジャズ・サックスの音色だったのかもしれません。
BLUE GIANT ―― 作品のストーリーについて
仙台の高校生、宮本大は「世界一のジャズプレイヤーになる」ことを決め、高校卒業とともに地元を離れ東京へと向かいます。何のあてもない東京では、仙台の同級生「玉田俊二」の家に転がり込み、アルバイトと都会の川辺でのサックスの練習に明け暮れ、そして得た少ない給料を持って、東京のジャズバーに足を運びます。そこで見つけた凄腕のピアニスト「沢辺雪祈」に、初対面で大は「オレと組もう」と告白します。
サックス暦が3年と聞き、はじめはまじめに取り合わない雪祈でしたが、大のサックスを聴き考えを改めます。そして2人でのセッションがはじまり、奔放な大のプレイに規律をもたらすドラマーが必要であることに気が付きます。ドラマーを探す2人ですが、そこに手を挙げたのは、夢であった大学生活に虚しさを感じ、目標を見失いつつあった玉田でした。大の前のめりな姿勢に感化され、初心者ながら玉田はドラマーとしてチームに加わり、ジャズトリオ「JASS」が誕生します。そして、彼らの目標を1年以内に日本最高のジャズクラブ「So Blue」に立つことと定めます。
街のジャズバーでのデビューからはじまり、地域のジャズフェスティバルへの参加など、いつも壁にぶつかりながらも、今は前に進むだけと決める大の姿勢によってその壁をぶち破り、JASSは前へ前へと進み続けます。初心者だった玉田が技術を凌駕する熱いプレイを身に着け、テクニックがあるがゆえに冒険ができなかった雪祈は魂のソロを演奏できるようになり、いよいよJASSはSo Blueへの切符を手に入れます。
そしてSo Blueでのライブを前日に迎えて、JASSは変わらず練習をこなし、そして雪祈は交通整理のバイトへと向かいます。夢の舞台を前日に控えた雪祈はこれまでの道程を想い出しながら、これまで支えてくれた母や大、玉田。オーディエンスに想いを馳せます。その刹那、居眠り運転のトラックが雪祈に衝突。雪祈は右腕を中心に大けがを負い、緊急搬送・入院することになります。その報せを受け、明日のライブの対応を迫られるSo BlueとJASSでしたが大は迷うことはありません。ただ「今は前に進まないといけない気がする」とライブの決行を決めます。
ライブ当日。急遽、サックスとドラムのデュオでの演奏となったことをいぶかしげに思いながらも、これまでJASSを支えてきてくれた人たちがSo Blueへと集まります。その期待と心配に満ちた会場で、大と玉田は魂の演奏を成し遂げます。サックスとドラムだけで、感動のステージを成し遂げてバックステージに下がる大と玉田。そこには、傷だらけの状態で病院を抜け出してきた雪祈が待っていました。アンコールの一曲には雪祈も参加する。そして、それがJASSの最後のプレイだ。それをもってJASSは解散し、大は次のステージへと進む。それを決め、トリオはSo Blueのアンコールのステージへと向かうのでした。
BLUE GIANT ―― 撮影と編集について
映像化が難しい作品だと言われていたそうです。きっと音楽面ですね。ジャズは詳しくありませんが、ボクは音楽にとても感動しました。楽曲を制作したのは、ピアニストの「上原ひろみ」、サックスは「馬場智章」、ドラムには「石若駿」が選ばれました。これまで、名作と呼ばれる「マイルス・デイビス」の「カインド・オブ・ブルー」などを聴いてはいましたが、彼らの演奏とこの映画によってジャズはライブのソロが激しく熱いということを知りました。そして、今はジャズプレイヤーのライブ盤を聴いています。ジャズのライブは本当にいい。近いうちにジャズのライブに行きたいと思います。
映像は演奏シーンのサイケデリックな演出がよかったです。一方で、引きの画のときにだけ採用されている(と思う)、モーションキャプチャーによるぬるぬるとした動作はイマイチのれませんでした。その一点をマイナス要素としたとしても、映像化が難しいと言われた作品を十分に感動できる、そして新しい気づきをたくさん与えてくれる映画にしてくれたと感じます。改めて、映画館で観れて本当に良かった : )
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