ドゥニ・ヴィルヌーブ監督、ティモシー・シャラメ主演作品「DUNE/砂の惑星」を観ました。最高の没入感を演出する「Filmed in IMAX」に認定された最初の作品でもあるということで、日本最高峰のスクリーンである、池袋のグランドシネマサンシャインのIMAXレーザー/GTテクノロジーで体験してきました。
6Fの建物と同等の大きさのスクリーンいっぱいに、美しくも悲しい未来の世界が広がる映画体験は、確かに今まで体験したことがない没入感が得られる経験でした。その辺りは撮影と編集のパートで詳しく感想を書きますが、本作の背景とストーリーから記録をはじめていきます。
DUNE/砂の惑星 ―― 作品の背景について
DUNEの原作は1965年に発行された「フランク・ハーバート」の小説です。半世紀以上も前に書かれた作品ではありますが、現代の社会構造に通ずる背景を持っています。DUNEの世界で一番の権力を握るのは「帝国」と呼ばれる宇宙の支配者です。そして、彼らがスパイスと呼ばれる富を生む価値を持つ素材を採取しているのが、物語の舞台となる砂の惑星デューンです。デューンには「フレメン」と呼ばれる先住民が住んでいますが、権力と武力を持って彼らを従わせ、スパイスを集めています。
ここに、現代の現実社会にも存在する、グローバル・ノースとグローバル・サウスの構造が透けて見えてきます。そして、物語の中のグローバル・サウスであるデューンはスパイスが採取できる以外は、砂ばかりの過酷な環境に置かれています。資本主義経済社会が引き起こした気候変動によって、北にある国よりも先にその脅威を受けることになっている南の国の環境のようです。快適なグローバル・ノースに住みながら、過酷なグローバル・サウスの資源を搾取して、さらに富を得る格差の構造がこの物語の中のメインのテーマとなっています。
そして、デューンは格差社会の下部にいる者たちが、上位の支配層を打ち倒し革命を起こす物語です。現代社会のひずみと、その先にある危機を想像しながら観てみるのも良いと思います。
DUNE/砂の惑星 ―― 作品のストーリーについて
物語は主人公「ポール」のナラティブとして進んでいきます。ポールは帝国に属する有力公家「アトレイデス家」の次期当主という地位にあります。本作は帝国の命によって、それまでデューンを支配していた「ハルコンネン家」に代わって、アトレイデス家がデューンに移住し、スパイスを採取する任につくところから進んでいきます。
デューンでスパイスの採取に関わることは、莫大な富を生むチャンスでもあります。しかし、そこには帝国や帝国に属する他の公家の陰謀が含まれていました。帝国公家の中でも突出した大きな力を持ちつつあるアトレイデス家をデューンで罠にかけ、滅ぼそうとするのが帝国とハルコンネン家の狙いでした。しかし、アトレイデス家の当主「レト」はその思惑に気がつき、それを阻止するために、デューンにおいて先住民のフレメンと手を組もうと画策します。先発隊である「ダンカン」の努力によって、フレメンとの会談にまでたどり着いたアトレイデス家ですが、これまで帝国に搾取され続けてきたフレメンからはつれない返事があり、協力はうまく得られないままとなってしまいます。
フレメンとの交渉にまごつく間に、帝国とハルコンネン家の侵略がはじまります。陰謀や裏切りによって、当主レトは囚われの身となり、ポールと母「ジェシカ」はデューンにおいて帝国からの逃亡し、再び力を得るために、フレメンの拠点へと向かいます。
そうした過酷な状況下でポールが生き延びる力となったのは、母ジェシカが幼少の頃からポールに指導していた、秘密結社「ベネ・ゲセリット」が持つ力でした。本来は女性のみの秘密結社であるベネ・ゲセリットの力がポールにもたらしたものは、ベネ・ゲセリットが持ちうる力を超えるものであり、その力を以て、ポールはフレメンへとたどり着き、またフレメンのメンバーにも認めらることとなります。そして、フレメンで出会ったのは、ポールが持つ「予知夢」の力で夢の中に何度も登場していたフレメンの女性戦士「チャニ」。
フレメンと合流し、チャニと出会ったポールは、帝国とハルコンネン家と対峙するための力を蓄えようとするのでした。こうしてようやくポールがフレメンと合流したところで、本作は終了です。新たな仲間を得て、帝国とハルコンネン家との戦いに臨むポールの次の物語はエピソード2を待つことになります。
DUNE/砂の惑星 ―― 撮影と編集について
前述の通り、Filmed in IMAXに初めて認定された映画です。IMAXのシアターで観ることをオススメします。さらに、できればグランドシネマサンシャインのIMAXレーザー/GTテクノロジーのスクリーンで。6Fの建物と同じ大きさの巨大スクリーンいっぱいに映し出される映像と、そして音がすごいです。ポールが持つ能力である「ボイス」が発せられると、音が体を突き抜けて心臓が震える感覚が味わえます。同様に、デューンに生息する巨大生物サンドワームが画面を横切ると、それに呼応して劇場も震えます。巨大な映像と震える音によって、身体も心もドキリと震えてしまうのが、Filmed in IMAXがもたらす没入感です。
そして、このIMAXの巨大スクリーンを活かす撮影と編集は、広大な砂の惑星を広く大きく映す撮影と、ポール(ティモシー・シャラメ)の儚く美しい表情を近く大きく映す撮影です。遠と近のコントラストを繰り返す編集も、この映画にうっとりとさせられてしまう演出です。本来ならば、静かで美しい風景も、演者を近くから撮影することも、コストが大きいIMAXカメラを使うには贅沢な場面ではあるのだけれど、惜しみなくその両者を1.43:1のアスペクト比で大きく観せてくれるのは、この映画が今までにない映画であり、歴史に残る作品になるかもしれないシンプルでわかりやすい理由です。
ぜひ、映画館で。そして、IMAXのスクリーンで、できればグランドシネマサンシャインのIMAXレーザー/GTテクノロジーのスクリーンで。今観ておくべき映画だと思います。
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