怪物 ―― 分断だらけの今、必要なふるまいは関心と寛容なのではと想いを馳せる

映画「怪物」を観ました。劇場は錦糸町のTOHOシネマズ楽天地です。

監督:是枝裕和×脚本:坂元裕二×音楽:坂本龍一という、日本が世界に誇るクリエイターが制作を担当し、カンヌ国際映画祭で脚本賞とクイア・パルム賞を受賞して世界的な評価も得た作品です。特に脚本の坂元さんには思い入れが強く、「東京ラブストーリー」からはじまり、初映画脚本の「花束みたいな恋をした」、そして「大豆田とわ子と三人の元夫」まで、その時代にどんなふるまいをすることが正しく、美しいのかをいつも参考にさせてもらっています。

さて、この怪物から感じた現在の正しきふるまいとは。作品の背景、ストーリー、撮影と編集の視点でまとめてみます。

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怪物 ―― 作品の背景について

LGBTQへの偏見、世代間闘争、キャンセルカルチャー、、日本にまだ残る怪物といってよい姿勢・ふるまいが随処に描かれ、陰鬱と静かに語られるストーリーでした。特につらかったのは、「永山瑛太」が演じる「保利先生」に対するキャンセルについて。一度「悪≒怪物」と認識されると坂道を転げ落ちるようにどこまでも落ちていく評価。何をしても何を訴えても、そこから這い上がる術が見当たらない、キャンセルカルチャーという怪物の姿がそこに見えました。

そして、様々な社会にはびこる怪物は無関心と不寛容によって生まれてくることを痛感します。もう少し寄り添って話が聴ければ、もう少し相手の身になってふるまえば、もう少し相手のことを見つめてあげられれば、その怪物は生まれることはなかったのに。分断の世紀・社会と言われる今、必要なふるまいは「関心と寛容」だと、また坂元裕二に教えてもらった気がします。

怪物 ―― 作品のストーリーについて

本作のナラティブは3人。このナラティブが3人いるという本作の構成が、坂元裕二の手さばきであり、怪物の姿を浮かび上がらせるパースペクトになります。最初の語り手は、小学生の子どもを育てるシングルマザー「麦野早織」。息子の異変に気が付き、無関心な担任教師保利や職員・校長に一生懸命それを訴えても伝わらず憤る母。しかしやがて保利の罪を見つけ、彼を学校から追いやることに成功するが、しかし彼女が見逃していたことは。。子どもに対し、深い関心を寄せているつもりが、社会に対する不寛容のために気づけなかった視点から怪物が生れることになります。

次に担任教師の保利。早織からの視点では、無関心で不寛容な教師と見られていた彼は、実は明るく好青年で、生徒に一定の寛容を示しつつ、しっかりと見守る教師でした。学校へと乗り込み、彼の非を責める母親に対し、それが冤罪であることを訴えますが、いずれ無関心な学校のシステムから切り捨てられることになります。生徒のためを想い、生徒間の関係にも目を配り配慮する彼でしたが、それでも見逃していたことは。。

そして、早織の息子、保利の生徒である「麦野湊」が最後のナレーターです。小学校という閉ざされた社会の中で、与えられた自分の役割を演じながら、その日々に違和感を感じ続けています。もう一人、同じクラスの「星川依里」。依里の役割は女々しいいじめられっこ。加えて、依里は父親に「怪物」だと言われ続けて育ちました。湊はそんな依里が演じる役割を見ていて、もどかしく感じる自分に気が付きはじめます。クラスメイトの視線に注意しながら、少しずつ依里との距離を縮めていく湊。やがて彼らは自分たちの秘密基地を見つけ、2人で遊び、会話し、自分たちの本性に気が付きはじめます。自分たちの本性は正しいものなのか、それとも怪物なのか。大人の常識に翻弄されつつも、2人は嵐の夜に新しい世界へと旅立つために、森の奥の秘密基地へと向かうのでした。

怪物 ―― 撮影と編集について

若々しく美しい自然と、生々しく古びた校舎や街並みを長回しも、贅沢なカット割りも使いながらしっかりと撮影・編集されたさすがの作品でした。気になった点は、もっとも美しいであろう、湊と依里が2人で森の中を飛び回り、遊び回る場面。2人の親密さを描くこのシーンはずっとフィックスのカメラで撮られていたと思います。しかし、嵐の後、秘密基地から這い出た2人が雨上がりの森を走るエンディングシーンではカメラはトラッキングショットで2人を追いかけます。解放感と躍動感に満ちる2人の姿は本当に美しいのですが、ふとこれは現実なんだろうか、という想いが頭をよぎります。

2人の姿を追うカメラの位置から、怪物の行きつく先を暗示・想像させる撮影と編集。作品の中では、そのボクの不気味な予感の答え合わせはしてくれないのだけれど、別々の方向へと歩きながら、目線を合わせずに手を振って別れるような、坂元裕二の爽やかなバッドエンドとは違うこのエンディングに。是枝監督が加えたスパイスで、いろいろと想いを馳せることになった作品でした : )

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この記事を書いた人

マーケティングに関わる仕事に20年以上携わっています。感銘を受けたポップカルチャーをマーケティング視点で記録したり、日々の暮らしや身に着けているもの、健康・投資について記録するためにブログを活用しています。

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