アベンジャーズシリーズ、タイカ・ワイティティ監督作品「ソー:ラブ&サンダー」を観ました。
話題作が続々公開となった2022年7月。ちょっと観に行くタイミングが遅れてしまったら、大きなスクリーンでの上映があまりなく、、TOHOシネマズ日比谷の中規模スクリーンでの鑑賞となりました。アベンジャーズ作品の中でも陽気でギャグ要素たっぷりのソーシリーズです。今回も80年代のハードロックバンド「ガンズ・アンド・ローゼス」の楽曲をフューチャーし、マッチョでグリッターでニヤニヤしてしまうシーンがたくさんありました。
しかし、クリスチャン・ベイル演じる本作のヴィラン「ゴア」の背景は、今このタイミングで観るといろいろ考えさせられるものがありました。その辺りも含めて、作品の背景、ストーリー、撮影と編集について思うところを記録しておきます。
ソー:ラブ&サンダー ―― 作品の背景について
作品の表面に感じる作品のテーマ・背景は、女性の活躍です。ソーやその他の神々、神殺しのゴアも含めて、マチズモ溢れる白人男性の中で、エンドゲームの戦いにも参加した「ヴァルキリー」はもちろん。かつてソーのパートナーだった「ジェーン」が戻ってきて、ムジョルニアを扱いマイティ・ソーとしてマッチョな男性と同等の戦闘を繰り広げる姿は爽快でした。加えて、最後にはゴアの娘がソーとともに暮らし、弱き者のために戦う姿が。ソーの後継はヴァルキリーでもなくジェーンでもなく、ゴアの娘であったことは、その他のアベンジャーズ作品と同様に、新しく若い女性が次代を担っていくという強いメッセージを感じます。
そして、ヴィランであるゴアの背景には、今このタイミングの日本人としては深く考えずにはいられません。信仰していた神に裏切られることによって闇落ちし、神殺しとなってしまう人物。その行動は絶対許されるものではないのですが、どうしてもマーシーを感じてしまう一面もあったりします。劇中の神のふるまいを見てしまうとなおさらですが、信仰による搾取は本当に忌むべきものであると、今だから感じる作品でもあります。
ソー:ラブ&サンダー ―― 作品のストーリーについて
本作のナラティブは3人。ソーとジェーン、それからヴィランであるゴアです。作品の冒頭では、ゴアが愛する娘を失い、それでも信じる神には裏切られて闇に落ちていく姿が描かれます。ソーは「サノス」との最後の戦いの後、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの面々と旅を続け、侵略に苦しむ弱き人々を救い続けていました。一方でジェーンは学者として名をはせながら、ステージ4のガンに侵され悩む日々を送っています。3人が交差するのは地球にあるニュー・アズガルド。それぞれの目的でニュー・アズガルドに向かった3人は、そこで最初の戦いを迎えることになります。
ムジョルニアの力を借りて、病を克服し、マイティ・ソーとなったジェーンの力も借りて、ソーはゴアによるニュー・アズガルドへの侵攻を防ぎます。しかし、ゴアはソーたちの隙をつきニュー・アズガルドの子どもたちを捕らえ連れ去ってしまいます。ソーとジェーン、それにヴァルキリーと「コーグ」を加えた4人は、子どもたちをゴアから奪還するために作戦を立て、神々の援軍を得るために全能の町へと向かいます。しかし、最高神ゼウスは高圧的な態度で助けを求めるソーたちの無下に扱います。その姿に意を決したソーは、ゼウスを倒し、彼の強力な武器であるサンダーボルトを奪い逃走します。
神の援軍は得られなかったソーたちですが、4人と手に入れたサンダーボルトを携えてゴアの元に向かいます。しかし、そこにはゴアの罠が仕掛けられていて、ゴアが目指す「永久の扉」を開くカギとなるストームブレーカーを奪われてしまいます。その戦いによって、ヴァルキリーは負傷し、ジェーンも病魔が克服できていなかったことが発覚します。
傷つき、ニュー・アズガルドに戻ったソーたちですが、再びゴアとの戦いに臨むことを決意します。傷ついたヴァルキリーと、病に伏すジェーンを置いて、ソーは一人でゴアのもとへと向かいます。捕らえられた子どもたちへのもとへと到着するソー。そこで、子どもたちに武器をとれと鼓舞し、自らの力を分け与えることで、子どもたち自らの行動で捕らわれの身から解放されます。そして、ゴアとの決戦に向かうソー。しかし、ゴアの力の前に苦境に陥ります。その時、病をおしジェーンがマイティ・ソーとなって現れ、ソーの窮地を救います。
しかし、ソーとジェーンの奮闘もむなしくゴアは永久の扉を開けることに成功します。そこで、最終的に彼が願ったのは亡くした娘を取り戻すことでした。ゴアがいなくても、娘を一人にさせないことをソーとジェーンは約束し、ゴアはそれを信じて娘をよみがえらせ、自らは死んでいきます。同じく、病の進行を克服することができずにジェーンも亡くなります。二人の想いを受け取ったソーは、その後、ゴアの娘と暮らし育て、彼女とともに弱き者を救う神の仕事を続けるのでした。
ソー:ラブ&サンダー ―― 撮影と編集について
神々の戦いを描くソー作品。その撮影と編集はマッチョで豪華で、ガンズのハードロックも相まってグリッターな編集が数多く展開されています。その中でも、やはりムジョルニアを扱って戦うシーンはスペクタクルを感じます。遠心力による横への展開と、重力にあがなう縦の描写。アベンジャーズのヒーローたちは、縦の動きをモチーフにするキャラクターや、横の動き、空間の移動など、それぞれ戦闘時のカメラの移動にモチーフを持っていますが、ソーがムジョルニアを扱って戦う場面においては、縦横無尽という動き・表現になるところが改めてマッチョだなと感じる撮影と編集でした。
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