イン・ザ・ハイツ ―― 今だからこそ、色とりどりの群衆の画が美しすぎる。格差社会の中の女性活躍の物語。

夏休みに映画館で観たミュージカル映画「イン・ザ・ハイツ」の記録です。再び(5度?)COVID-19が猛威を振るう状況下で観ることで、より素晴らしさを実感する映画でした。

本作は、ミュージカル「ハミルトン」でも注目された、「リン=マニュエル・ミランダ」が制作した同名ミュージカル「イン・ザ・ハイツ」を映画化した作品です。ミランダは自分自身がプエルトリコ移民の2世であるというバックボーンを持ち、作品の舞台となったニューヨークの南米移民の街「ワシントン・ハイツ」は自分が暮らし、育った街でもあります。だからこそ、その街が直面する問題や、そこに暮らす人々の心の葛藤が生々しく詰め込まれた作品でした。

その背景やストーリー、撮影と編集についてまとめておきます。

目次 - post contents -

イン・ザ・ハイツ ―― 作品の背景について

イン・ザ・ハイツ ―― 撮影と編集について

前述のとおり、本作の舞台はニューヨークのワシントン・ハイツ。冒頭で主人公の「ウスナビ」はその街で何が起こっているのかを唄い、語ります。ニューヨークに夢を描きやってきた南米移民の街ハイツでは、地価の高騰が続き、変わらぬ生活を送ろうとすることさえ叶わず、夢破れ街を出ていく人たちが増えています。格差と先進国の都市部で起こるジェントリフィケーションの問題が突きつけられます。

こうした資本主義経済社会に組み込まれる住民たちの想いや行動にもコントラストや分断が生まれてきます。ある人はハイツから出て、より自分の才能を磨き成長したいと想い。ある人は今の暮らしを守ろうとする。またある人は、忙しい経済社会の枠組みから外れ、先祖の祖国である南米に戻りたいと願う。資本主義経済がもたらす格差は、近いルーツを持つ人たちの共同体だったハイツの中にさえ分断のタネをまき散らしていきます。

分断や問題に直面した住民たちの選択で感じたこと。男性は優しく明るくあるべきであること。女性はより輝けるように活躍を目指すこと。旧来のイメージにある、夢を追って街を出ていく男性と、その想いを汲んで涙ながらに見送り街に残る女性。そんな固定概念を覆す、ダイバーシティがあふれるメッセージがこの映画の背景にはありました。

イン・ザ・ハイツ ―― 作品のストーリーについて

イン・ザ・ハイツ ―― 作品の背景について

物語は、ハイツで生まれ育った4人の若者、2組のカップルを中心に語られます。父から譲り受けた雑貨店を経営するウスナビは、地価が高騰し、次々と人々が出ていくハイツに見切りをつけ、自身もルーツであるプエルトリコに帰りたいと行動を起こしています。そんな彼が想いを寄せるのが「バネッサ」。彼女はファッションデザイナーになることを夢みつつ、ハイツの美容院でネイリストとして働いています。そして「ニーナ」。彼女は小さい頃から地域の才女として皆に期待され、スタンフォード大学に入学しますが、そこで人種が起因する問題に直面し、悩みながらハイツに戻ってきます。そのニーナと付き合うのが、ニーナの父が経営するタクシー会社で働く「ベニー」。お互いを想いながら、自分の進む道を惑いながらも前に進む4人がこの物語の主人公です。

ハイツを出ていくことに決めたウスナビ。ファッションデザイナーの夢を諦めかけたバネッサ。大学を退学し、街に戻ることを決めたニーナ。自分の決断に一抹の寂しさも感じつつ、今を楽しもうと迎えたハイツのフェスティバルと、そこで起こった大停電。それから、彼・彼女たちを母のように祖母のように見守り続けてきた「アブエラ」によって、また彼と彼女の決断や人生が変わっていきます。

型どおりのファッションデザインではなく、リユース生地でのデザインに目覚めたバネッサ。そのバネッサのデザインを見て、ハイツに残りバネッサと一緒に雑貨店もバネッサがデザインするファッションも販売し、盛り上げていこうと決断するウスナビ。父の想いを汲み、再び大学に戻り自分の力を磨こうと街をでるニーナ。彼女を支え続けるベニー。格差や差別の問題が押し寄せるハイツで4人が決めた決断は、自らの才能を伸ばし活躍を目指す女性と、それを優しくサポートする男性というパートナーシップに帰結しました。

イン・ザ・ハイツ ―― 撮影と編集について

イン・ザ・ハイツ ―― 作品のストーリーについて

ミュージカル映画です。しかし、台詞と歌の編集が素晴らしくミュージカルで時折感じる違和感は全くありません。きっと、サルサやレゲエ、ラテンなど南米の音楽は彼らの生活のリズムに密着しているからでしょう。楽しさも悲しみも喜びも、音楽とともに語られることで共感力が何倍にも増幅されています。またこれは、今のご時世だからこそという点も大きく、COVID-19によってライブのような音楽を体で浴びる体験が2年近くできていない状況下で、映画館の良質な音響システムによって、音楽を浴びる機会を得たことで、多幸感が得られる体験になりました。

撮影についても同様かもしれません。「密」を避けろと言われ続けるご時世の中で、踊り歌う群衆の姿に幸せを感じます。表情あふれる主人公たちの寄りの画から、カメラが引いていくと、色とりどりの南米カラーを身に着けた群衆たちの密な姿が見えてくる。この人々の美しさによる高揚感は、映画館の外の状況を想うと涙が出てきます。信頼できるコミュニティと、密なコミュニケーションがポスト・コロナには絶対必要であると、感じる映画でもありました。公開は残り僅かかもしれませんが、ぜひ映画館で観て欲しい作品です : )

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

sharing is!

コメント - comments -

コメントする

CAPTCHA


目次 - post contents -
閉じる