マーケティングに関わる仕事を20年続けています。マーケティングでは、永い間「人々の生活をより豊かにする」ことを考え、実行してきました。しかし、昨今では人々の豊かさと同等に、世界や地球全体に関わる課題の解決を目指す必要を感じています。つまり、人も環境も良い状態で持続可能(サスティナブル)であることが求められています。
それまでは、人々の欲求(ウォンツ)に耳を傾け、気を配りながら商品開発やプロモーションのお手伝いをしてきましたが、それに加えて、社会課題への目配せ、配慮を行うようになりました。よりパーソナルなウォンツの理解を追求してきましたが、今は全人類で自分事として語るべき「時代のナラティブ」は何なのかを考えています。その大きな道標が、国連で定めた「SDGs(持続可能な開発目標)」だと思って理解を深めてきました。
しかし、この本『人新世の「資本論」』では、そのSDGsを「現代版大衆のアヘンだ」と言いのけます。時代のナラティブへの理解を深めるために、その背景と、そこで大きなリファレンスとされている経済思想「マルクス思想」を理解しておかないとと感じ、少し時間を割いて、このブログでまとめておきます。
人新世の「資本論」―― ジェフ・ベゾスの失言に資本主義の虚しさを感じる
既存の経済モデルは、恒常的な成長と利潤獲得のための終わりなき競争に基づくもので、自然資源の消費は増え続けていく。こうして、地球の生態学的バランスを危機に陥れているこの経済システムは、同時に、経済格差も著しく拡大させている。豊かな国の、とりわけ最富裕層による過剰な消費に、グローバルな環境危機、特に気候危機のほとんどの原因があるのは、間違いない。
このブログを書く数日前に象徴的な出来事がありました。Amazonのファウンダー、元CEOの「ジェフ・ベゾス」が自らが手掛ける宇宙開発ベンチャーの事業で、初の有人宇宙飛行を実現しました。その偉業に対するベゾスの発言に批判が集まっています。彼は以下のような明らかな失言をしました。
この失言には、本書が触れている資源の消費、経済格差の問題が集約されていると感じます。グローバル資本主義経済社会を牽引するAmazonを創業したジェフ・ベゾスは尊敬に値する人物だと思っています。また、生産と消費のみだけでなく、環境配慮や格差に対する多額の寄付など、社会課題への目くばせもしている人物でもあります。でも、この一言から透けて見えるもの、この一言だけで、資本主義の虚しさを感じてしまうことになりました。
気候正義(climate justice)という言葉は、日本語としては耳慣れない言葉かもしれないが、欧米では毎日のようにメディアを賑わせている。気候変動を引き起こしたのは先進国の富裕層だが、その被害を受けるのは化石燃料をあまり使ってこなかったグローバル・サウスの人々と将来世代である。この不公正を解消し、気候変動を止めるべきだという認識が、気候正義である。
正義という言葉に強く反応してしまいます。気候変動の問題に関わらず、これからしばらくは「正義」とは何なのか。を考えて行動する時代になるように感じました。先のベゾスの失言も、正義とは何かが頭に入っていれば発することができない内容だったと思います。
これは、単なる二酸化炭素排出量の削減に向けた国際的連帯の呼びかけにとどまらない。ドイツのナチス、イギリスによる南アフリカでのアパルトヘイト、そしてアメリカの石油産業といった帝国主義の歴史を反省し、資本主義の負の遺産から決別することを求めた、グローバル・サウスからの先進国への呼びかけなのである。つまり、帝国的生産様式に挑むグローバルな連帯を求めているのだ。
そうか。現在の気候変動も格差社会も、ナチスやアパルトヘイトで行われたことと構造は同じなんだ。グローバルな連携によって成長を続けていた資本主義は、あくまでもグローバル・ノースの連帯でしかなかった。その偽りの連帯から、真のグローバルな連帯を実現するためには、正義の視点が必要だと思います。
人権、気候、ジェンダー、そして資本主義。すべての問題はつながっているのである。
資本主義の構造が、人権、気候、ジェンダーの問題を引き起こす。否定したい気持ちもあり、そう認識して行動する必要もあるのでは、と思う気持ちもあります。たまたま、このタイミングで先のジェフ・ベゾスの失言を聞いてしまったことも大きいです。
政治にできることは、せいぜい問題解決の先送りにすぎない。だが、現在の地球環境においては、まさにこの時間稼ぎが致命傷となる。見せかけだけの対策に安心して人々が危機について真剣に考えることをやめてしまうのが、一番危険なのである。同じ理由から、国連のSDGsは批判されないといけない。中途半端な解決策ではなく、石油メジャー、大銀行、そしてGAFAのようなデジタル・インフラの社会的所有こそが必要なのだ。要するに、革命的なコミュニズムへの転換が求められているのである。
激しいオピニオンです。エネルギーから金融、そしてデジタル・インフラまで、社会的所有にせよ。という意見。ここまでこの本を通して、ケインズとマルクス、資本主義と社会主義について考えてきて、まだ自分なりの答えは出せません。ただ、「正義」は何なのかという視点を持とうと思います。その行動を本書の学びとして、これから先も考えていきます : )
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