人新世の「資本論」―― 資本主義の矛盾はクローバル・サウスに凝縮されている

マーケティングに関わる仕事を20年続けています。マーケティングでは、永い間「人々の生活をより豊かにする」ことを考え、実行してきました。しかし、昨今では人々の豊かさと同等に、世界や地球全体に関わる課題の解決を目指す必要を感じています。つまり、人も環境も良い状態で持続可能(サスティナブル)であることが求められています。

それまでは、人々の欲求(ウォンツ)に耳を傾け、気を配りながら商品開発やプロモーションのお手伝いをしてきましたが、それに加えて、社会課題への目配せ、配慮を行うようになりました。よりパーソナルなウォンツの理解を追求してきましたが、今は全人類で自分事として語るべき「時代のナラティブ」は何なのかを考えています。その大きな道標が、国連で定めた「SDGs(持続可能な開発目標)」だと思って理解を深めてきました。

しかし、この本『人新世の「資本論」』では、そのSDGsを「現代版大衆のアヘンだ」と言いのけます。時代のナラティブへの理解を深めるために、その背景と、そこで大きなリファレンスとされている経済思想「マルクス思想」を理解しておかないとと感じ、少し時間を割いて、このブログでまとめておきます。

本書に関するブログは「人新世の「資本論」」のタグでまとめています。
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人新世の「資本論」―― 資本主義は地球から掠奪をしている

グローバル・サウスとは、グローバル化によって被害を受ける領域ならびにその住民を指す。グローバル・サウスの抱える問題は、以前なら「南北問題」と呼ばれていた事態だ。ただ、新興国の台頭や、先進国への移民増大によって、「南北」格差は地理的位置との関係が必然ではなくなりつつある。そのため、本書では、グローバル・サウスという言葉を使いたい。ともかく、旧来の南北問題も含め、資本主義の歴史を振り返れば、先進国における豊かな生活の裏側では、さまざまな悲劇が繰り返されてきた。いわば、資本主義の矛盾がクローバル・サウスに凝縮されているのである。

気候変動をはじめとした、数々の社会課題は、先進国と途上国の間で、その深刻度や考え方に差異があり、ねじれと格差を生んでいると本書では説いています。その社会課題に対する深刻度が大きな国・エリアを「グローバル・サウス」と呼んでいます。そして、このグローバル・サウスへの負荷は、資本主義がはじまったころから延々と続くものであることを、本書で気づかされます。

自動車の鉄、ガソリン、洋服の綿花、牛丼の牛肉にしても、その「遠い」ところから日本に届く。グローバル・サウスからの労働力の搾取と自然資源の収奪なしに、私たちの豊かな生活は不可能だからである。

これは、言われれば当たり前のことだと思うけれど、不注意に生活していると忘れてしまう事実です。そして、気候変動も地球全体の問題だと理解しつつも、日々の生活はどうしても自分の身の回りでしか考えられず、目の前にある脱プラやエコロジーな生活に気を付けるぐらいしか行動ができていません。代替肉がなぜ必要なのか、その本質を知ったときにはハっとする思いをしました。

健康的な生活のためにということではなく、牛肉を生産するために、多くのCO2が排出され、牛に与えられる飼料によって、途上国の人々に行き渡るはずの穀物が消費されてしまっている。牛肉を食べることを控えて、代替肉で補うことで、脱炭素や飢餓、格差の問題へのアプローチにつながることは、なかなか想像ができません。そして、そういう我々先進国に暮らす人々の想像力の欠如によって、これらの問題はさらに加速していきます。

資本主義のグローバル化が地球の隅々まで及んだために、新たに収奪の対象となる、「フロンティア」が消滅してしまった。そうした利潤獲得のプロセスが限界に達したということだ。利潤率が低下した結果、資本蓄積や経済成長が困難になり、「資本主義の終焉」が謳われるまでになってきた。

グローバル・ノースがグローバル・サウスを食い物にしてきた結果、グローバル・サウスから得られる利潤を食い尽くそうとしていると本書では説明します。これ以上、利潤を生んでくれる場所がなくなってきてはじめて、先進国はSDGsというようなキャンペーンをはじめるに至ったとも考えられます。そして、同時に人に対する問題だけではなく、地球環境に対する問題も噴出してきたところに因果を感じます。

資本主義による収奪の対象は周辺部の労働力だけでなく、地球環境全体なのだ。資源、エネルギー、食料も先進国との「不等価交換」によってグローバル・サウスから奪われていくのである。人間を資本蓄積のための道具として扱う資本主義は、自然もまた単なる掠奪の対象とみなす。このことが本書の基本的主張のひとつをなす。

資本主義は、グローバル・サウスからヒト・モノを掠奪するだけでなく、自然も掠奪に対象としている。資本主義にアンチテーゼを突きつけるこの本の基本主張です。前述の通り、想像力が足りずに気付いていなかった不都合な真実を突きつけられると、この本に引き込まれ、忸怩たる思いが込み上げてきます。ただ、やはりマーケティングを進めるためには、ネガティブな事象に対して、ポジティブなアプローチをして良い方向に進めていくことが大切です。その視点を持って、なるべく気を付けて俯瞰して読み進めて、機会を見つけたいと思います : )

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