人新世の「資本論」―― COVID-19で露見したショック・ドクトリンとブルシット・ジョブ

マーケティングに関わる仕事を20年続けています。マーケティングでは、永い間「人々の生活をより豊かにする」ことを考え、実行してきました。しかし、昨今では人々の豊かさと同等に、世界や地球全体に関わる課題の解決を目指す必要を感じています。つまり、人も環境も良い状態で持続可能(サスティナブル)であることが求められています。

それまでは、人々の欲求(ウォンツ)に耳を傾け、気を配りながら商品開発やプロモーションのお手伝いをしてきましたが、それに加えて、社会課題への目配せ、配慮を行うようになりました。よりパーソナルなウォンツの理解を追求してきましたが、今は全人類で自分事として語るべき「時代のナラティブ」は何なのかを考えています。その大きな道標が、国連で定めた「SDGs(持続可能な開発目標)」だと思って理解を深めてきました。

しかし、この本『人新世の「資本論」』では、そのSDGsを「現代版大衆のアヘンだ」と言いのけます。時代のナラティブへの理解を深めるために、その背景と、そこで大きなリファレンスとされている経済思想「マルクス思想」を理解しておかないとと感じ、少し時間を割いて、このブログでまとめておきます。

本書に関するブログは「人新世の「資本論」」のタグでまとめています。
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人新世の「資本論」―― COVID-19で露見したショック・ドクトリンとブルシット・ジョブ

危機が深まれば深まるほど、国家による強い介入・規制が専門家から要請され、人々も個人の自由の制約を受け入れるのである。

過去の世界大戦、ベトナム戦争、2001年の同時多発テロ、2008年のリーマン・ショック、それから2020年代のCOVID-19で繰り返し行われた、ショックドクトリン(惨事便乗型資本主義)の構造です。ジャーナリスト「ナオミ・クライン」が警鐘を鳴らしてきましたが、COVID-19でも、ニューヨーク州知事「アンドリュー・クオモ」と、元Googleの「エリック・シュミット」による、スクリーン・ニューディール政策をショックドクトリンであると指摘しています。

資本主義の経済活動を最優先すべく、反対する大臣や専門家を更迭して、突き進んだ。高額な医療費の支払いができる富裕層や、リモートワークで自己防衛ができる人々だけが救われれば良いという態度を露骨に見せる。自分は何回もPCR検査を受けながらも、貧困層など社会的弱者がどうなろうが、自己責任であると突き放すのだ。ボルソナロ大統領にいたっては、アマゾン開発に反対する先住民のあいだに広がる感染を、森林伐採の好機とみなし、経済回復というお題目を掲げて、伐採の規制を撤廃しようとした。これこそ典型的な惨事便乗型資本主義である。

本書では経済格差が引き起こした、医療機会の格差。それから、COVID-19からの復興をお題目とした環境破壊に対して、ショックドクトリンを指摘しています。2020年のはじめ、パンデミックのはじめの頃に大きなウネリを強く感じたのは、グローバリズムによる国際協調から、ナショナリズムによる自国優先の政策への転換です。パンデミックのはじめには、各国が都市封鎖を行い、自国以外との交流を一気に閉じてしまった。ショック状態が、永年積み上げてきた国際協調を一夜にして崩壊させることに驚いたし、ショックドクトリンを目の当たりにした感覚がありました。

現在高給をとっている職業として、マーケティングや広告、コンサルティング、そして金融業や保険業などがあるが、こうした仕事は重要そうに見えるものの、実は社会の再生産そのものには、ほとんど役に立っていない。デヴィッド・グレーバーが指摘するように、これらの仕事に従事している本人さえも、自分の仕事がなくなっても社会になんの問題もないと感じているという。世の中には、無意味な「ブルシット・ジョブ(クソくだらない仕事)」が溢れているのである。

視点は変わり、ボク自身がとても気にしている言葉である「ブリシット・ジョブ」についてです。COVID-19によって、エッセンシャルワーカーの貴重さと大変な状況を世界が共有することになりましたが、一方で、ロックダウン、ステイホームな環境においても、それがなくても世の中が動いていくくだらない仕事が浮き彫りになってしまったりもしました。ボクが見多くマーケティング業界もその一つであることを理解しつつ、本質は価値を生産する役割を持っているかどうかだと考えるようにしています。

資本主義経済社会では、ルールを作り、決める人が強いことは明らかです。でも、やっぱりモノを作っている方がボクは好きです。以前から、その構造に憤りを感じていて、今も感じていますが、ブルシット・ジョブが露見したこの機会に、その構造も変わるきっかけを得ることができるのではと、期待しつつチャンスを覗っています。資本主義の中で、ショック・ドクトリンとブルシット・ジョブが跋扈しないように、今までよりも少しだけ勇気を持って、ブルシットな出来事に対して発言と行動をしていこうと思っています : )

人新世の「資本論」―― COVID-19で露見したショック・ドクトリンとブルシット・ジョブ

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この記事を書いた人

マーケティングに関わる仕事に20年以上携わっています。感銘を受けたポップカルチャーをマーケティング視点で記録したり、日々の暮らしや身に着けているもの、健康・投資について記録するためにブログを活用しています。

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