シカゴ7裁判 ―― 1968年。民主主義のために戦った人たちの実話。陰謀論渦巻き、ショックドクトリンに備えるべき今だからこそ観ておくべき映画です。

2020年に公開されたネットフリックス映画の話題作。2021年のアカデミー賞有力候補にも挙がる「シカゴ7裁判」を観ました。

この作品では、「The whole world is watching!(世界が見てる!)」というパンチラインが印象的に使われます。作品の舞台である1968年は、作品が公開された2020年と同じ米国大統領選挙が行われる年です。当時はベトナム戦争下、次々と戦火に兵士として民衆が送り込まれる中、それに反対するリベラル・レフトウィング・左派の人々が、民主主義のために訴え、大きな陰謀の中で罪に問われる状況を描いています。今まさに、民主主義が問われ、陰謀論が渦巻く中、当時の状況をリファレンスするべく、観ておくべき作品だと思います。

観終えた感想を記録しておきます。大した情報は書けませんが、未見の方は、スポイラー(ネタバレ)情報を含みますのでお気をつけください。

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シカゴ7裁判 ―― 作品の背景について

シカゴ7裁判 ―― 作品の背景

前述の通り、民主主義について描かれるドラマです。今、米国国内において大統領選挙という民主主義の象徴的な手続きを経ても、それに納得できない人々がいるという状況。それから、世界においても、米中の分断と、その背景にある非民主主義(中心は一党独裁)国家の台頭という状況下において、1968年に民主主義が脅かされる事態に陥った状況と歴史を振り返るために、昨年、米国大統領選挙の前に公開されたことに大きな意味がある作品です。

当時はベトナム戦争という大きな厄災があり、今はCOVID-19という大きな厄災と戦っているという点において、権力者がショックドクトリンを狙い、世の中のルールを民主的な手続きを省いて大きく変えてしまうリスクを見せつけられる内容になっています。

同時に、民主主義を訴えるリベラル派の人たちは、その中において、互いの主義・主張や振舞いが少しずつ異なり、それを訴えているにも関わらず、まとまらない。小さな分断が生じてしまうというような皮肉も描いているところが興味深いです。「The whole world is watching!(世界が見てる!)」というパンチラインを胸に刻み、民主主義とは何なのか、それを実現するために、ボクたちはどう行動するべきかを考えることが大切であることに気が付く作品です。

シカゴ7裁判 ―― 作品のストーリーについて

シカゴ7裁判 ―― 作品のストーリー

シカゴ7裁判のストーリーは、法廷と被告側の集会場である「共謀事務所」での会話劇と、裁判の焦点であるシカゴで行われた民主党集会で起きた、警察とデモ隊の衝突現場の回想シーンを中心に進んでいきます。その衝突を先導した罪に問われるのが「シカゴ7」と言われる、左派のリーダーたち7人です。ただし、その7人は裁判で問われる衝突のための共謀を行った訳ではなく、それぞれの主張やふるまいは少しずつ異なる7人であり、同じ法廷で裁かれる理由は存在しませんでした。

そこがショックドクトリンを狙う政府の思惑で、まとめてカウンターカルチャーな勢力をつぶしてしまいたいという目的と、それとともに7人を集めてしまうことで、左派の内側からの分断を誘う狙いがありました。裁判は最初から、政府の息がかかっているであろう、超保守派の裁判官が7人の有罪を決め付けた審理を進めていきます。加えて、分断を誘うような情報・証言を裁判の中で繰り出し、その思惑のまま、7人の分断が進んでしまいます。

物語は終始、シカゴ7の劣勢のまま進み、鬱々とした気分のまま展開されます。彼らの反撃はクライマックスで、「The whole world is watching!(世界が見てる!)」を証明するかのごとく、集会において衝突を先導するかのような誤った発言をしてしまった「トム・ヘイデン」が、法廷でベトナム戦争における戦死者の名前をひとりひとり読み上げるところにカタルシスがあります。このファクト、この現状確認が世間の空気を変え、彼らは無罪を勝ち取ることになります。

シカゴ7裁判 ―― 撮影と編集について

シカゴ7裁判 ―― 撮影と編集

会話劇が中心の作品のため、撮影と編集について特筆するべきポイントがあまりない作品です。脚本・監督はアーロン・ソーキンで、「ソーシャル・ネットワーク」や「マネーボール」、「スティーブ・ジョブズ」といった、実話映画の脚本を書いてきた人であり、またいずれも会話劇を中心とした作品に関わってきた監督です。そういう作品の中においても、集会におけるデモや衝突の場面で、1968年当時の現実の映像がモノクロで挿入される編集については、生々しく迫力を感じました。

こうした映像が残る、まだ50数年前の出来事です。当時を反省し、今を間違いなく進むためのリファレンスにするべきだと思います。

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この記事を書いた人

マーケティングに関わる仕事に20年以上携わっています。感銘を受けたポップカルチャーをマーケティング視点で記録したり、日々の暮らしや身に着けているもの、健康・投資について記録するためにブログを活用しています。

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