ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド ―― つらいエンディングを想像していたら、真逆の爽快感あるカタルシスを得た

2019年劇場公開映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(Once Upon a Time in​… Hollywood)」が、ネットフリックスで公開されていました。今更ですが、COVID-19禍を経て、アメリカの大統領選挙を経て、今観たからこそ感じられたコトもあったかなと思って、ブログに感想を記録しておきます。

監督はクエンティン・タランティーノ。特別な想い入れはないけれど、ほぼすべての作品を観ています。主演はブラット・ピットとレオナルド・ディカプリオ。彼らの主演映画もかなりの本数を観ていると思います。きっと、タランティーノもブラット・ピットもディカプリオも、ボクらアラフォー世代のムービースターということですね。

2019年の話題作ではあったけれど、ストーリーは深く追っておらず。ただ、現実にあったシャロン・テート事件を背景にしており、シャロン・テートが劇中に出てくるということは知っていました。カルト集団にハリウッド女優が虐殺されるというシャロン・テート事件も知っていたので、少なからず悲劇が起こる作品だと思って観ましたが。。この映画はスポイラー(ネタバレ)なしで観た方が良い作品です。その前提があったからこそ、タランティーノが創るめっちゃカッチョよいカタルシスを体験することができました。作品の背景、ストーリー、撮影と編集という視点で感想を記していきます。

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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド ―― 作品の背景について

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド ―― 作品の背景について

本作の舞台は1969年。ベトナム戦争下であり、共和党のニクソン大統領が就任した年の物語です。ハリウッドという華やかな舞台を描きつつ、その背中に迫っている格差問題や、戦争と反戦運動、民主主義について、それらが巻き起こす陰謀論やカルト集団への言及があります。

例えば、主人公の2人はハリウッドスターとそのスタントマンであり、一方は山の手の豪邸に住み、一方はトレーラーハウスに住んでいます。そのトレーラーハウスに住むスタントマンとヒッピーたちとの交流にも格差が描かれ、そのヒッピーたちは実はカルト集団「マンソン・ファミリー」の一員でもありました。また、山の手に住むハリウッドスターにも、新進気鋭の若手に対する盛りを過ぎたスターの焦燥感が露わに描かれ、また構造の頂点にいる制作サイドとの格差も感じます。

そうした各所各所における分断の結果は、格差の底辺にいるモノたちのテロリズムに帰着します。そんな華々しくも毒々しい時代と場面を切り取り、確かにそれを感じる作品でもあるのですが、この辺りがさすがタランティーノと言うべきでしょうか。そんな背景をチラチラと見せつつ、深読みするボクのようなオーディエンスにガツンと爽快なカタルシスを届け、深読みするオーディエンスや、それらすべての社会課題に対して中指を立てるような作品でした。ポップカルチャーを難しく考えてんじゃねーよ。そんなメッセージですかね。

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド ―― 作品のストーリーについて

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド ―― 作品のストーリーについて

本作のストーリーラインは3つ。少し落ち目を感じるハリウッドスター「リック・ダルトン」、そのスタントマン兼世話役として付き添う「クリフ・ブース」。そして、若手女優で実在の事件の被害者となった「シャロン・テート」の3人の生活が描かれます。

ダルトンはハリウッド映画やイタリア映画に出演しつつも、過去の栄光と現状、それから将来の不安を感じつつ、惑いながらも虚勢を張り、ハリウッドスターとして振舞います。ブースはダルトンの付き人をしつつ、スタントマンとしての仕事を探しますが、過去の行動や、現在も納得いかないことには我慢できない性格が災いし、なかなか仕事を得ることができず。でも、ダルトンとは違い、どこか飄々とそうした自分の現在地を受け入れつつ生活します。

シャロン・テートは若手女優としてキャリアを積みつつ、若手大物映画監督の「ロマン・ポランスキー」を射止め、私生活でも結婚と妊娠という人生の絶頂期を迎えようとしています。そんなテートだからこそ、現実に起こった凄惨な事件の影がつきまとい、きっと作中の後半で起こるであろう悲劇のつらさを際立たせる描写に感じてしまいます。

それぞれの生活を送る中、最初に不穏な影に遭遇したのはブースでした。ダルトンを送迎中に何度か遭遇したヒッピーの「プッシーキャット」と3度目に出会ったとき、彼女のヒッチハイクを受け入れ、彼女が住むというヒッピーのコミューンまで車で送ることになります。そのコミューンで不穏な空気を感じたグースはコミューン内部にまで足を踏み入れるが、確信を得ないままそこを後にします。

そして、シャロン・テート事件が起こった1969年8月8日。そのコミューンの住人であり、カルト集団マンソン・ファミリーの一員であった4人がシャロン・テートが住む、ロマン・ポランスキー邸に向かうのでした。事実に基づけばその4人がテートとその日、その家に滞在していた友人らを惨殺するのですが。。その手前で、隣人であるリック・ダルトンと遭遇し、酒に酔ったダルトンが彼らに罵声を浴びせることで、事実と異なる展開に進んでいきます。

ダルトンに罵声を浴びせられ、一度体制を整えなおすために後退したマンソン・ファミリーの4人。その過程で、自分たちに悪態をついた人物はテレビドラマに出演していたリック・ダルトンであることに気がつき、「自分たちに殺人を(テレビドラマの中で)教えた野郎から殺そう」と標的をダルトンに変更します。そして、ダルトン邸に突入したときに対峙したのは、愛犬のピットブル「ブランディ」の夜の散歩を終えたばかりのブースで。4人は一瞬怯みますが、彼に銃を突きつけます。

そこからは、爽快なタランティーノ活劇。詳細は撮影と選出のパラグラフで記載しますが、スタントマンとして鍛えたブースとピットブルのブランディの活躍で4人を打倒し、マンソン・ファミリーの計画は潰えます。結局、(作中では)シャロン・テートは襲撃を受けず、マンソン・ファミリーの存在さえ知ることもなく、絶頂期を謳歌するのでした。ということで、実在した人物を登場させ、実在した事件をテーマにしたストーリーだったにも関わらず、結末は異なる世界線に帰着させたのがタランティーノが振るったタクトでした。

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド ―― 撮影と演出について

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド ―― 撮影と編集について

車好きのタランティーノ。劇伴に拘り、いつもかっちょいいタランティーノの本領発揮といった撮影と演出でした。ダルトンの世話人として運転手もつとめるブースのドライブシーン、そこで流れるバックミュージックがとてつもなくかっちょ良くて、また何度もそんなシーンが登場します。さらにタランティーノの嗜好が爆発するのが、ダルトンが出演するテレビドラマを劇中で見せるシーンです。劇中のテレビ中に映されるのは60年代風の映像で、解像度は荒いのですが、カメラの位置やカットに拘りがありキレのあるかっこいい映像になっています。映画好きのタランティーノの本気をここでも感じることができます。

そして、改めてタランティーノの真骨頂。ブースとダルトンとブランディと、マンソン・ファミリーとのバトルシーンです。タランティーノのカタルシスはココにあります。ブースの容赦ない攻撃によって、顔面が崩壊するマンソン・ファミリー、ブランディによって手首や局部を食いちぎられるマンソン・ファミリー、止めはダルトンが映画の道具で使った火炎放射器を持ち出してきて噴射、轟々とした炎に襲われプールの水上で上半身が炎に包まれるマンソン・ファミリー。

残酷すぎるバトルシーンだけど、そのカタルシス溢れる映像がなんだかとてもかっちょよく観せるタランティーノ劇場。何度も言いますが、つらいエンディングを想像していたら、真逆の爽快感あるカタルシスを得た映画でした : )

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