イカゲーム ―― 格差の下の格差を描く韓国ドラマ

ネットフリックスで話題沸騰中の韓国ドラマ「イカゲーム」を観ました。所謂デスゲームもの、欧米では「キューブ」や「ソウ」「ハンガーゲーム」、日本でも「バトルロワイヤル」や「カイジ」といった作品が容易に連想されるカテゴリーに属する映像作品です。ボクは先に挙げた作品はいずれも観ていて、、特に好きなジャンルとは言いたくないのですが、怖いもの観たさなのか、なんなのか、ついフォローしてしまうテイストだったりします。やっぱり好きなのかな。。

韓国の作品はもはや日本の映像作品よりも世界的に認められる作品が多く、ネットフリックスだけを見ても、日本のランキングでもいつも上位に位置する作品が多いという認識を持っています。しかし、デスゲームカテゴリとうって変わって、ボクは韓国作品にほぼ触れていません。自分の基準の中では、そんなコントラストを持った作品ではありますが、あまりにも話題になっているために観始めたら、まあ、一気にエピソード9まで観終えてしまったので、感想を残しておきます。

あ、まだフレッシュな作品なので、念のため。以後はスポイラー(ネタバレ)を含みますので、お気をつけてください。

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イカゲーム ―― 作品の背景について

イカゲーム ―― 作品の背景について

前述の通り、韓国の作品については馴染みが薄いボクですが、韓国作品の近年の金字塔「パラサイト」は楽しく観ました。そのパラサイトとの共通点は、格差社会を描いた作品であること。特に両者を観て感じたこと、あえて韓国作品は、と括ってみますが、徹底的に格差の下の格差まで描いているという点において、その特徴を見出してみました。パラサイトでは格差社会の底辺にいる貧しい一家が裕福な家族のテリトリー(家庭内)に侵入していく様子をコミカルに描いていますが、そんな貪欲な貧しい家族よりもさらに下に、裕福な家庭の地下に住み着く格差社会の底辺よりもさらに下の地底に暮らす一家が登場する部分がカタルシスでした。

イカゲームでも、そんな格差の下の格差が描かれています。デスゲームに集められた400人はいずれも金に困り、現実社会で満足に暮らすことができな格差社会の底辺にいる人たち。しかし、ゲームの中では、そんな底辺の人たちの中にも階層が作られ、支配するものと、虐げられるもののコントラストが描かれます。そして、運営者サイドは常に「平等」を謳うという奇妙な構造がより格差を際立たせることになります。グローバル企業を生み、急激な発展を遂げた韓国。大陸にある半島の南側に位置するという地政学を背景に持つ韓国の人たちが、今感じている奇妙な構造が作品の背景にあるという点が、世界中が注目する作品になった理由のひとつでると感じました。

イカゲーム ―― 作品のストーリーについて

イカゲーム ―― 作品のストーリーについて

主人公はギャンブルに溺れ、借金を背負い、それが原因で愛する妻と娘と離れ離れになり、年老いた母親のすねをかじる「ソン・ギフン」。そして、最終的にギフンとともにデスゲームの最後の2人に残り、最終のイカゲームを戦うのは、ギフンの幼馴染であり、北京大学出身のエリート証券マンで、先物取引で巨額の借金を背負ってしまった「チョ・サンウ」。最終決戦に残るこの2人がこの物語の主要なナレーターとなります。

しかし、ボクが魅力を感じたのは、それよりもさらにマイノリティな以下の3人です。まずは女性2人。北朝鮮出身の脱北者で、弟と母のためにゲームに参加する「カン・セビョク」。父親のDVによって追い詰められ、父を殺害してしまった元受刑者の「ジヨン」。この2人はとても魅力的で、セビョクを演じる「チョン・ホヨン」と、ジヨンを演じる「イ・ユミ」は、この作品ではじめてしりましたが、すっかりファンになってしまいました。そして、もう一人はパキスタンからの不法移民「アリ」。

この3人の中の2人、ジヨンとアリが脱落し死んでしまうエピソード6がボクのハイライトでした。特に、セビョクとジヨンがお互いの素性を語りあうシーンがとても良かった。それまでは2人とも無感情で、恐ろしいデスゲームにも淡々として挑む姿が印象的でしたが、この場面ではじめて感情が表に出るところ。格差の底辺にいる自分よりも厳しい環境にさらされている相手への想いが湧き出てくるところ。スタイリッシュで美しい2人の韓国女優の魅力がすごいです。

で、作品のストーリーとしては、ジヨンとアリが脱落したこのエピソード6以降は自分の中でちょっとトーンダウンしてしまうところが、残念な点ですが。。最終話、エピソード9では次のシーズンに続くかもしれないようなにおわせがあったり、主人公ギフンの過去のエピソードがチラ見せのみで回収できていなかったりするので、続きがあるのかも知れません。次回作があったら、それはそれで見てしまうかも。

イカゲーム ―― 撮影と編集について

イカゲーム ―― 撮影と編集について

格差社会を背景に持つ作品であるので、上と下、縦の構造の描写が意識的に撮られています。ゲームの参加者が待機する部屋では、ベットが何段も縦に積まれていたり、ゲーム会場へと向かう部屋ではビビットな色に塗られた印象的な階段が描かれていたり。カメラワークも足元から上にパンする画が意識的に多様されていたりします。アクションシーンでも海底に潜り、丘に登り。。などなど、上と下の構造を描く撮影が特徴です。パラサイトでも、丘の上にある家と、半地下の家。丘の上の家の地下と上と下の構造が意識的に撮影されていたので、やはり両作品の共通点を感じます。

以上が、イカゲームの感想です。話題作とあって、全エピソード観ても後悔はない作品だと思いますし、なによりセビョクのチョン・ホヨン、ジヨンのイ・ユミの魅力を知れたことが良かったかな : )

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この記事を書いた人

マーケティングに関わる仕事に20年以上携わっています。感銘を受けたポップカルチャーをマーケティング視点で記録したり、日々の暮らしや身に着けているもの、健康・投資について記録するためにブログを活用しています。

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