ハウ・トゥ アート・シンキング ―― アート思考の理解のために、デザイン思考を改めて確認する

アートシンキングという言葉を聞く機会が増えました。特にCOVID-19禍を通して叫ばれるようになった「VUCA(不安定・不確実・複雑・曖昧)な時代」に対応する新しい思考法として注目されています。ボク自身はまだ半信半疑ではありますが、マーケティングを生業としていて、商品開発の支援を行っている立場としては、基本知識は得ておかないとと思っています。

まずは手始めに本に頼ろうと思って選んだのが「ハウ・トゥ アート・シンキング」です。読み進めながら、このブログで参照点をまとめつつ、勉強していきます。

今回は、アート思考の使い方を理解するために、デザイン・シンキングの使い方や方法についての筆者のまとめを確認します。デザイン思考によるアイデア発想は仕事でも実施することがありますが、改めて確認ですね。

本書に関するブログは「ハウ・トゥ アート・シンキング」のタグでまとめています。
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ハウ・トゥ アート・シンキング ―― ロジカル思考はみえているものの分類。デザイン思考はみえていないものの類型。

ロジカル・シンキングが顕在的課題を「みて分かる」ブロックに分解していくのに対し、デザイン・シンキングは「まだはっきりとみえていない課題」を「みえる化」し、「みて分からない」ものをみつける手法です。

なるほど。この整理はとても分かりやすいです。ロジカル・シンキングはみて分かる課題を、より分かりやすくするために分類していくこと。一方で、デザイン・シンキングはまだはっきりとみえていない課題を、まとめて(類型して)、みえる形にしていくこと。と理解します。ボクのリサーチ現場では、分類と類型を拘って使い分けているので、この説明が役に立ちそうです。みえているものを分類するのではなくて、まだみえていないものを類型して、みえる形にしていきましょう。そんな説明です。

ロジカル・シンキングが「ピラミッドストラクチャー」と「MECE」という武器をもっていたように、デザイン・シンキングもいくつかの武器をもっていました。特に特徴的なのは「エスノグラフィ」と「プロトタイピング」です。「エスノグラフィ」とはもともとは「民俗学」や「文化人類学」の手法で、観察対象者の生活に密着する(ときにベッドルームまで押しかけます)ことでそこに隠れたニーズをみつけようとするものです。「民俗学」はそもそも文化的にまったく違う価値観をもつ、未開の民族の価値観や文化をバイアスなくみようとします。

まだみえていないものをみえる化するのがデザイン・シンキングなので、対象を観察し続けることが必要になります。エスノグラフィですね。でも、民俗学・文化人類学のエスノグラフィは「一緒に生活する」ぐらい密着して、みえていないものを解きほぐしていきます。それと比較すると、ベッドルームに押しかけてもまだ不十分ですね。我々はそれを補うために、3週間~4週間の間、生活現場をこと細やかにデータ化してもらうことで、生活への密着の代替をしています。なかなか誰にでもできることではないので、大変ですが。。

寄り添って観察すると、ロジカル・シンキングのように、「30代」の「女性」が買わなかったのではなく、ある地域で駐輪の取り締まりが厳しくなって自転車で買い物に行けなくなったことが購入を減らした原因だ、と気づけます。ロジカル・シンキングのように机上で分解していくだけではニーズに気づくことはできない、とデザイン・シンキングは考えます。大事なのは生活に入り込み、共感することなのです。

マーケティング業界で大切にされている、クリステンセンの「ジョブ理論」の考え方です。ロジカルに考えていては回答にたどり着けない「生活者がお金を払ってでも解決したい用事を探す」プロセスです。

「店舗の売上が下がっている」という課題は、「30代女性の一回あたりの購入金額」という分析ではなく、「自転車で買い物に行けない」という生活者の体験(UX)の課題としてみえる化されます。この仮説にもとづき、実際に解決策をつくって試すのが「プロトタイピング」です。ロジカル・シンキングが机上での思考であるのに比べると、デザイン・シンキングは手と足を使います。

この場面でプロトタイピングかぁ。。UXデザイン=ジョブの解消を可視化・具体化するプロセスはいつも悩みどころです。みえない課題のみえる化まではイケるのですが、解決策のみえる化(プロトタイピング)が、リアルな現場では難しい。Webやアプリではプロトタイピングは実活用されているんですけどね。一歩前に進めたいと改めて思いました。

① 顕在的な課題を分析的に解決する「ロジカル・シンキング」
② 潜在的な課題を共感的に見出し解決する「デザイン・シンキング」
③ 課題から出発せず、自分の衝動によって価値に革新を起こす「アート・シンキング」

シンキング・シリーズのまとめですね。こう整理すると、我々が日々取り組むクライアントのマーケティング支援では、デザイン・シンキングまででOKな気もします。アート・シンキングは自社事業、私事業で活用すべきですかね。いずれにせよ、ちゃんと理解しておきたいですし、改めて全体を俯瞰するよい機会になりました : )

ハウ・トゥ アート・シンキング ―― アート思考の理解のために、デザイン思考を改めて確認する

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この記事を書いた人

マーケティングに関わる仕事に20年以上携わっています。感銘を受けたポップカルチャーをマーケティング視点で記録したり、日々の暮らしや身に着けているもの、健康・投資について記録するためにブログを活用しています。

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