遅ればせながら「シン・ウルトラマン」を観てきました。夏休み前日に、一人で映画でも観て連休に突入しようかと上映中の作品を探します。しかし、この夏はなかなかのハイペースで映画を観てきたので、ものすごく観たい作品はそこにはなく、消去法で長くロードショーされているシン・ウルトラマンを選びました。
そんな感じでしたが、観てみたら良かったです。21時過ぎの公開時間、150席超の中規模な劇場でしたが9割以上席が埋まっていました。コロナ禍後にこんなにギュウギュウな劇場で映画を観たのははじめてかも。エンドロール後には拍手が巻き起こったり、久しぶりになかなかに熱を感じる映画体験でした。
そんなシン・ウルトラマンについて、背景とストーリー、撮影と編集について記録しておきます。
シン・ウルトラマン ―― 作品の背景について
怪獣(作品内では禍威獣)が登場する作品は、どうしても気候変動や自然災害と重ねて観てしまいます。本作でも電力や核廃棄物を扱う怪獣が現れ、またそれらは日本に放置されていたモノたちであるという背景も語られて、日本や地球を滅ぼそうとするモノたちの根底には、日本人や人類が自ら作り出した原因が起因しているということを思い知らされます。
そしてまた、怪獣とは別の存在として外星人が登場します。彼らは知性を持ち、日本人に外交を迫る存在として地球にやってきます。そこでは、何を脅威として考え、どこと手を組めば自らのポジションに対してメリットがあるのかを問われ続けます。全人類が協力して対応するべきである、地球の存続が危ぶまれるような大きな問題があるのにも関わらず、主義・主張・エリアによって分断される地球と、その中でどこにポジションを置くべきなのかを考えなくてはならない、そんな馬鹿げた大きな問題を描くのも特撮作品の役割であることを改めて感じました。
シン・ウルトラマン ―― 作品のストーリーについて
ウルトラマンでもある「神永」が所属する「禍特対(カトクタイ)」のメンバーを通して、禍威獣との戦いや、外星人や日本政府・地球各国との外交の不条理や滑稽さを語るストーリーです。突如、日本に現れるようになった怪獣(後に禍威獣と命名される)に対し、日本政府は禍特対を設立し、その脅威と対峙します。禍威獣との戦いの中で、人間:神永は逃げ遅れた子どもを助けるために単身現場に赴き、子どもを守りながら戦禍に巻き込まれ命を落としてしまいます。
地球を監視していたウルトラマンは、その神永の行動を見ることで人間に興味を持ち、神永の命を維持するために人間と融合することを決めます。神永と融合したウルトラマンは、正体を隠したまま禍特隊に所属し、禍威獣から日本を守るために時にウルトラマンに変身し戦います。そこへ禍威獣の登場に呼応するように、外星人も人類を滅ぼすために地球に迫ります。地球へやってきた外星人ザラブは、神永がウルトラマンであることを知り、陰謀を巡らし、神永の正体を明かしつつ、ニセウルトラマンによって攻撃を仕掛けます。日本政府はウルトラマンを敵を見なし、神永を追いますが、禍特隊のメンバーであり、神永のバディである浅見の奮闘もあり、ウルトラマンはザラブを打ち倒します。
次には、外星人メフィラスが現れ、地球技術の進歩を促す巨大化装置「ベータシステム」の提供を以って、日本政府に不平等条約を結ぶように迫ります。禍威獣に対し、それから地球の他の国々に対し抑止力を持ちたいと考えた日本政府はその条約の締結を決めますが、その外交を止めるべく、ウルトラマンとして神永がメフィラスに対峙します。しかし、戦いの最中、メフィラス星人は突如条約締結を諦めて星に帰ることを決めます。そこに、光の星からの使者「ゾーフィ」が現れたからです。
ゾーフィはウルトラマンが地球人類に干渉をしたことで、監視を続けていた地球が危険な存在と認定され、廃棄処分とする決定が下されたことを伝えます。地球の廃棄処分のために使われるのは、「最終兵器ゼットン」。ウルトラマンは地球を守るために、強大なゼットンを破壊するために宇宙に向かいます。しかし適わず、傷を負ってしまったウルトラマンは地球の、禍特隊の技術の進歩に掛け、ベータシステムを禍特隊の「滝」に託します。滝は世界中の科学者の協力を仰ぎ、メタバースの存在を明らかにします。そして、ゼットンをメタバースの世界に飛ばすことを最終作戦として計画します。
それはウルトラマンの犠牲が必要となる危険な作戦でした。地球技術が開いたメタバースの世界にゼットンを押し込め、自らは元の世界に戻ろうと試みるウルトラマン。そのとき、ゾーフィが現れウルトラマンにこう問います。「そんなに人間が好きになったのか」。問いに対するウルトラマンの答えに心を動かされたゾーフィは、地球の破壊を取り消し、また神永の命を守るためにウルトラマンと分離させ地球に戻しました。禍特隊の面々に見守られながら、地球人:神永は地上で目を覚ますのでした。
シン・ウルトラマン ―― 撮影と編集について
戦いのシーンでは旧来のウルトラマンへのオマージュが散りばめられた古い映像が差し込まれ、会話劇のシーンでは妙なアングルから妙なピントの合わせ方をする「実相寺アングル」が取り入れられ、それらがシリアスな場面でも滑稽な印象を与える効果を与えています。こうした奇抜な撮影は真剣に怪獣との戦いや問題解決に臨む登場人物たちを少しゆがんだ視点で見つめるような不条理も感じます。子どもの頃、手に汗握って観続けた特撮ヒーローを、大人になりその不条理や滑稽な背景や物語としても見てとれるアングルを与えるような撮影と編集ではないかと感じました。少しニヤっとしながらも、楽しく、背景までも想いを巡らせて観ることができる作品でした : )
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