地下鉄道~自由への旅路~ ―― 壮絶なストーリーを最高の映像と編集で見せるドラマシリーズ

2021年上半期のドラマシリーズの中でも最高峰の評価を得ている、Amazon Prime Videoオリジナルドラマ「地下鉄道~自由への旅路~」を観終えました。監督はカラードのクイアというマイノリティの人生を描き、アカデミー賞作品賞を受賞した「ムーンライト」の「バリー・ジェンキンス」です。ピュリッツァー賞を受賞した「コルソン・ホワイトヘッド」の小説「地下鉄道」を原作としたドラマです。19世紀半ばの北米の黒人奴隷をテーマにしています。

たった今、COVID-19禍という難しい状況の中、自国に世界中の国・人種が集まり東京オリンピックが開催されているタイミングで、人権や人種・格差について考える作品に触れられたことは、とても大きな印象に残る結果となりました。「地下鉄道~自由への旅路~」について、背景とストーリー、撮影と編集について記録を残しておきます。

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地下鉄道~自由への旅路~ ―― 作品の背景について

地下鉄道~自由への旅路~ ―― 作品の背景について

前述の通り、北米の黒人奴隷制度についての物語です。2020年にはブラック・ライヴス・マター(BLM)の運動が世界中に広がり、今年2021年にはウイグルの人権問題が世界の課題となって表面化してきました。現在にも続く、体制やレイシスト思想のルーツであり、過酷さが映像化されています。そして「地下鉄道」はそうした構造から黒人奴隷を開放しようと、南部の奴隷州から北部の自由州やカナダへの逃亡を支援した、実在の組織の名前でもあります。

当時、実際には地下鉄道は走っていなかったけれど、その組織は自由への逃走を鉄道をメタファーに使って表現していました。本作ではその史実に基づきつつ、実際に「地下鉄道が存在したら」というフィクションを加えてドラマ化しています。奴隷制度という構造から抜け出そうともがく人々とその組織の活動は、今なお続く人権や格差・人種の問題を改めて見つめなおすきっかけを作ってくれると思います。

地下鉄道~自由への旅路~ ―― 作品のストーリーについて

地下鉄道~自由への旅路~ ―― 作品のストーリーについて

本作の大きなストーリーラインは2つ。奴隷制度からの解放を目指し、地下鉄道を乗り継ぎ逃走を続ける主人公の「コーラ」の視点と、彼女を追う、逃亡奴隷ハンターの賞金稼ぎ「リッジウェイ」の視点でストリーが進められます。

ジョージア州のランドル農園で生活するコーラは、母親から、もしくはその前からずっと続く奴隷階級として厳しい生活・労働環境の中で暮らしていました。十分な教育を受けぬまま育ち、同じ環境で働く多くの奴隷が思考停止し現状を受け入れている中、コーラはそれを受け入れてしまうことに抵抗しているかのような言動が見られます。それを周囲の人びとは「奇妙な子ども」と表現します。そんなコーラの言動に注目し、一緒に地下鉄道による逃亡を促す「シーザー」によって、コーラは導かれ、ジョージアを出ることになります。

コーラの旅路は、ジョージアからサウス・カロライナ、ノース・カロライナ、テネシー、インディアナと続きます。その旅の途中で、各地域によって黒人との接し方や待遇が異なる、北米の奇妙なコントラストを体験し、知ることとなります。同時に、旅の道連れとなったシーザーや「ブリックス」「ジャスパー」「ロイヤル」を失う旅路でもありました。黒人の扱いに各地で色の違いはあれど、北米の白人の心に刻まれた人種差別の意識は根深いものであることを痛々しく知る道程です。

一方でコーラを追い続けるリッジウェイの旅路は、自分のルーツを見つめなおす旅路でもありました。白人でありながら、奴隷解放の活動を続ける人道的・先進的な父親に育てられながら、差別意識を捨てられず、レイシスト思想に取りつかれ、逃亡奴隷ハンターになってしまった自分を省みる旅です。残虐非道なリッジウェイですが、彼の心の葛藤を省みることで、現在の黒人差別主義な人たちが縛られたしがらみの一端を知るきっかけにもなると感じました。

地下鉄道~自由への旅路~ ―― 撮影と編集について

地下鉄道~自由への旅路~ ―― 撮影と編集について

ストーリーもさることながら、地下鉄道の見どころは撮影と音楽だと思います。まず、エピソード1の最後で、もうありがちだけどもやっぱり盛り上がってしまう、作品の最後にタイトルがバン!と出る編集と、エンディングトラックで最初のカタルシスを迎えてしまいます。最高のクライマックス、カタルシスもこの演出で、エピソード9の最後、最終話を前にコーラの物語が一区切りを迎える場面で、タイトルの表示と、トラックは「チャイルディッシュ・ガンビーノ」の「ディス・イズ・アメリカ」。本作の音楽は、バリー・ジェンキンスのムーンライトの頃からの相棒である「ニコラス・ブリテル」が担当しています。

そして、バリー・ジェンキンスの最大の評価ポイントでもある照明も素晴らしい。ムーンライトでは黒人の肌色に合わせてブルーの照明を効果的に使うことで、それまでの照明技術は白人の肌を美しく見せるために発達した。という歴史を変えたと評価されました。本作ではオレンジの光を印象的に使い、美しく印象に残る映像を実現しています。その他、フラッシュフォワードの印象的な使い方と。それから、黒人の群衆を印象的なストップモーションで撮影することで、言葉にならない怒りを悲しみを伝える効果を得ています。まるでモノのように、無表情で微動だにしない黒人の群衆の絵は本当に印象に残ります。

重いテーマ、壮絶なストーリーに偏ることなく、最高の映像と編集で見せるドラマシリーズでした : )

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