Skip to content

♪05 No Woman No Cry

次回から時代を駆け上がりながら、ボブのライフを紡ぐストーリーを本格的にスタートしますが、今回は友人を想うボブのサイドストーリー、それから、私の愛して止まない詩にフォーカスして、ボブの物語を進めます。

私のハイティーンはこの詩とともに成長し。20代になり、癒されて。30代で、改めて勇気付けられ。そして、きっとこれからも主題歌として、ずっとそばに置いておきたいと願う詩です。

研ぎ澄まされ透きとおり、刺されるようなボブの歌声。
アイスリーズの繊細で儚いコーラス。
とても静かに、ゆっくりと。そっと包み込んでくれるメローなメロディ。
少し遅れてやってくる、優しさに満ちたカッティングギター。

 

No Woman No Cry
(words:V.Ford music:B.Marley)

 

ただ、ボブの生きたジャマイカの若者の生活を歌った詩です。とても素直に、とてもリアルに。厳しさと、悲しさと、現実と、希望と、愛をすべてを含み優しく強く唄った詩です。この曲と向き合うと涙が出て。そして笑顔になります。泣きながら、力強く笑顔を見せる。そんな詩です。

この曲のクライマックス。ボブは、

 

Everything’s gonna be all right
(いつかすべてがうまくいく)

 

と私たちに唄いかけます。何回も、何十回も唄います。
とても優しく、ときに強く。
それは私たちに言い聞かせるように。
そして自らに言い聞かせるように、、、。

No Woman No Cry♪♪♪

No woman no cry
No woman no cry
No woman no cry
No woman no cry

Said,said,said I remember when we used to sit
In the government yard in Trenchtown
Ob-ob-observing the hypocrites
As they would mingle with the good people we meet
Good friends we have
Oh, good friends we’ve lost
Along they way
In this great future
You can’t forget your past
So dry your tears, I say

And no woman no cry
No woman no cry
Dear little darlin’, don’t shed no tears
No woman no cry

And said I remember when we used to sit
In the government yard in Trenchtown
And then Geogie would make the fire light
I said, it was log was burnin’ through the night
Then we would cook cornmeal porridge
Of which I’ll share with you
My feet is my only carraige
So I’ve got to push on through

But while I’m gone, I mean
Everything’s gonna be all right
Everything’s gonna be all right
Everything’s gonna be all right
Everything’s gonna be all right
I said everything’s gonna be all right
Ooh, everything’s gonna be all right
Everything’s gonna be all right
Yeah, everything’s gonna be all right

No woman no cry
No woman no cry
Oh, my little sister,don’t shed to tears
No woman no cry

Hey little darlin’, don’t shed no tears
No woman no cry
Little sister, don’t shed no tears
No woman no cry

ノー ウーマン ノー クライ♪♪♪

ノー ウーマン ノー クライ
ノー ウーマン ノー クライ
涙を見せないで
泣いてはいけない

憶えているよね
トレンチタウンの公営ヤードによく座っていたことを
いい奴らの中に
偽善者がそしらぬ顔して混ざっていたのを眺めていたね
素敵な友達がたくさんいたんだ
だけど 失ってしまった
みんな 戦いの中で死んでしまった
忘れろって言ったって無理だろう
だけど未来は明るいんだ
さぁ 涙をふいて

ノー ウーマン ノー クライ
キミよ泣くな 泣かないで
ボクのかわいい恋人よ 涙を流さないで
泣いてはいけない

憶えているよね
トレンチタウンの公営ヤードによく座っていたことを
ジョージーが薪に火をつけると
炎は一晩中燃えていたね
コーンミール粥を作って
キミと分け合って食べたんだ
ボクにはまだ2本の足がのこっている
ボクを運んでくれるのはこの足だけ

だから 歩き続けるんだ

ボクにはわかるんだ
ボクがいないあいだも
きっとすべてがうまくいく
いつかすべてがうまくいく
いつかすべてがうまくいく
いつかすべてがうまくいく
何度でも言うよ きっとすべてがうまくいく
あぁ きっとすべてがうまくいく
いつかすべてがうまくいく
そう きっとすべてがうまくいく

だから泣かないで
キミよ泣いてはいけない
ボクの小さな恋人よ 涙をみせないで
泣いてはいけない

だから泣かないで
ボクの小さな恋人よ 涙をみせないで
ノー ウーマン ノー クライ

さぁ ボクのかわいい恋人よ 涙をふくんだ
ノー ウーマン ノー クライ
ボクのかわいい恋人よ泣かないで
ノー ウーマン ノー クライ

※訳文は筆者の勝手な解釈を含みます。ご了承ください。

♪♪♪

No Woman No Cry
words:V.Ford music:B.Marley

ノー ウーマン ノー クライ
作詞:ヴィンセント・フォード 作曲:ボブ・マーリィ

♪♪♪

ヴィンセント・フォード。
短い人生の中で、星の数ほど詩を唄ったボブですが、ボブの曲の中で、彼、ヴィンセント・フォードの名がクレジットされている曲は唯一この詩だけです。

ヴィンセントはボブがトレンチタウンに住んでいたころの友人です。彼はずっとトレンチタウンに住んでいます。トレンチタウンからボブが去り、バニーが去り、トッシュが去っても(バニー、トッシュはボブとともにウェイリング・ウェイラーズをつくったバンド仲間)、ヴィンセントはトレンチタウンに住みつづけました。

ヴィンセントは、いつまでも。トレンチタウンにいました。

ある夏。ボブが生誕50周年記念を迎えた夏。日本でもボブを特集する雑誌やTV番組がいくつか作られました。その夏、高校生だった私は、そんなTV番組の特集で、はじめてヴィンセントを知りました。その頃も、ヴィンセントはまだトレンチタウンに住んでいました。

ボブが死に、時が経っても。彼はまだトレンチタウンにいました。彼はトレンチタウンから離れられなかったのです。 それは、彼がボブと過ごしたトレンチタウンの思い出が忘れられなかったからかもしれません。もしくは、彼の体が不自由であったがためかもしれません。

私がはじめて。TVの中でみた彼には、両足の膝から先がありませんでした。

詩の中で、多くの友人を失ってしまった。と、ホブが唄ったように。トレンチタウンの厳しい現実は、彼の両足を彼から奪ったのでした。その不自由な体でヴィンセントは、TV番組のインタビューに応えます。この詩ができるまでのことを。

この詩にでてくるジョージーは少し、頭がおかしかったんだ。
彼は夜になると、どこからか薪を集めてきてね。
ボクらはその薪に火をつけて、その周りで夜が明けるまで
いつも詩を唄っていたんだ。空腹を紛らわすためにね。
あのころはそれだけで楽しかったんだ。

彼は、齢50歳を超えながら、少年のような笑顔をしてそう語っていました。そして、少し悲しそうに微笑みながらこう付け加えました。

だけど、みんないなくなってしまったよ。
ボブは世界に。そしてジョージーはあっちの世界に。
殺されてしまったんだ。政府の人間に。銃で撃たれてね。

これが、厳しいジャマイカの現実です。

私たちは今、幸せな世の中を生きています。友人が銃で撃たれるような。そんな厳しい現実を生きたことはありません。ヴィンセントのインタビューを聞いて思います。私たちは、彼らほどに大きく、重いものを失った時、彼らのように詩を唄えるでしょうか。

ボブが唄ったように
Everything’s gonna be all right(いつかすべてがうまくいく)
と唄えるでしょうか。

ボブの詩が心の奥のひだを振るわす理由が良く分かります。
ボブが唄い、訴え続けてきたこと。それはすべてがリアルなのです。
ボブの生きたライフが産み出した、レゲエミュージックの物語は続きます。

♪♪♪

最後に、このNo Woman No Cryのエピソードをもうひとつ。

この詩にヴィンセントの名前がクレジットされた理由は、その不自由な体を想ってのボブの優しさだと言われています。不自由な体でひとりトレンチタウンに残る友人に、少しでも残せるものがあればと。ボブは友人たちを唄ったこの詩が、世界中で鳴り響けば鳴り響くほど、ヴィンセントの生活の厳しさを、少しでも和らげることができればと、そう願ったのでした。

Jah Rastafari!

Photo by dubdem sound system