慶應大学の国領先生のソーシャル時代の資本主義の話。入り口は企業と生活者の関係の変化についてでした。
国領先生はソーシャルメディアによるつながりで、企業にとって顔を知ることができなかった顧客の顔が見えるようになり、経済は「匿名経済」から「顕名経済」化すると説きます。
顕名経済化とは、生産者と顧客がお互いに名前の分かる関係としてつながることを指します。逆に20世紀型の大衆消費社会は、工場で大量生産された規格品を、名前のわからない匿名の顧客に売られる、匿名経済でした。相手が誰だか分からないので、支払いは現金払いが基本でした。見知らぬお店の人から買うことになるので、信用できるように「定価」などが決められていました。電波を使った一方向メディアで、誰とも分からない大衆に一斉にメッセージが送られていました。
なるほど、これまでもマーケティングでは顧客育成が大きなテーマでしたが、ソーシャル以前の社会では顔が見えない顧客へのアプローチしか術がなかったのです。AIDMAやAMTULなどの、消費行動モデルの検証も全体を俯瞰した上での統計の上での実感しか持てないものだったのです。
ネットワークは切れていた関係をつなぎなおします。たとえば、今まで誰が最終顧客か分からないで出荷していたメーカーが、製品に二次元バーコードをつけて、顧客にスマートホンなどで読み取ってキャンペーンに応募してもらうことで、直接つながることなどを可能にします。「匿名」で「過去の関係も分からず」「これからも連絡がとれなかった」顧客が、「顕名」で「購買履歴が分かり」「未来も継続的に連絡のとれる」お客さんに転化した場合に、ビジネスのやり方が大きく変わるのは容易に想像できるかと思います。顔の見え合う時代のビジネスモデルも検討します。切れていることを前提としていた、排他的所有権を譲り渡す「販売」モデルから、つながっていることを前提に必要な時だけ「利用権」を購入して実質的に多くの人たちと共有する「シェア」モデルが台頭する可能性を検討します。
ソーシャルネットワーク(に限らずですが)が、企業と顧客の距離を近づけます。顔の見えない顧客が見えるようになり、さらに「未来も継続的に連絡がとれる」関係になります。大仰に書いてありますが、以前からこうした関係構築は可能ではありました。でも、ソーシャルメディアというカジュアルな雰囲気と絶対的な双方向性を持つメディア・ネットワークの誕生は、今まで幻想に近かったマーケティング・アクションをよりリアルなものにします。その可能性が見えてきます。
ここまではまだイメージできる範囲ですが、国領先生の言うソーシャルによる資本主義の変化を読み進めてみます。
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