年の瀬も押し迫ってきました。先日ニュースになりましたが、今年一番売れた本は阿川佐和子さんの「聞く力―心をひらく35のヒント」でした。100万部を突破しました。企業はこの1年で生活者の声の傾聴アクションが重視されるようになりましたが、一般生活者からも聞くという行動への注目が集まっていることがわかります。
我々『聞く技術研究所』も、来年に向けて一層気合が入ります。
さて「聞く力」では、阿川さんがインタビュー経験で得た聞くことの大切さやコツが、ときにユーモラスに、ときにウェットに語られています。それらのエピソードはソーシャルな時代に企業が生活者の声を聞くための、心構えや工夫に活かせるものが詰まっていました。
今回は「聞く力」から学んだ聞く技術を整理して紹介します。
■高校生からのインタビューを受けて、嬉々とした表情を浮かべているのは、高齢の名人たちでした
全国の高校生が、森で働く名人を訪ね「聞き書き」をしてレポートをまとめるという活動に関するエピソードは「聞く力」の中でも印象深いものでした。その体験を通して、高齢の名人はこう話します。
最初、こんな孫みたいな若い高校生に、何を話せばいいんだか、何の役に立つんだか、わからねかったけど、会って質問されているうちに、うれしくなっちゃってね。だって、家族も知り合いも、誰も自分の仕事のことなんかに興味を持ってくれないからね。こんなに自分の話、長くしたことねえもんな
高齢の名人たちは高校生から聞いてもらえる体験を通して、元気になり勇気付けられ、自らより多くを語りだします。このエピソードはソーシャルメディアに飛び込み、生活者とダイレクトに会話をはじめようとする企業に大きな勇気を与えてくれます。耳を傾けることは、相手を気持ちよくする。ということを教えてくれます。
我々もソーシャルメディアのアクティブサポートの取り組みの中で、同様のことを感じています。例えば、良いクチコミを書いてくれているブログに企業の名前でコメントし、お礼をします。企業から生活者へ、突然のコミュニケーションにも関わらず、その反応は企業が自分の声を聞いてくれたことのうれしさと高揚感に満ちています。
●ブログへのアクティブサポートの反応例
■聞かれた側もまた、語りながら改めて自分の頭を整理して思いも寄らぬ発見をする
「聞く力」ではこう解説し、だから聞くことは止められないとしています。この話しもクチコミをマーケティングに活用する上でとても勇気付けられます。当社はクチコミプロモーションを生業にしていますが、クチコミを伝えようとしたとき、その受信者に「聞く」ことを徹底します。発信者からの情報提供は極力少なくなるようにします。
それは上記の通り「聞かれた側もまた、語りながら改めて自分の頭を整理して思いも寄らぬ発見をする」からです。クチコミの原理は情報の受信者が発信者になる循環をたくさん生み出すことです。情報の受信者が、クチコミを通して新しい発見をして、その発見を次の人に話したくなる。そんなクチコミの循環には「聞く力」が必要であることを教えられます。
■次の質問を見つけるためのヒントはどこに隠されているだろう。隠れているとすれば、一つ目の質問に応えている相手の、答えのなかである
「聞く力」ではインタビューの質問は事前にひとつだけ考える。次の質問は相手の答えから導く。だからこそ本気で相手の話しが聞ける。と解説しています。
これはソーシャルメディアで日々、投稿コンテンツを考える上での大切なヒントとなります。例えば、Facebookでは発信内容に頭を悩ませるのではなく、ソーシャル上に流れる生活者の声に耳を傾け、他の人たちにシェアするべき、もっと広めるべきクチコミの発見に時間を注ぐことが大切です。
そんな生活者の声が聞けたら、ぜひ臆することなく声を掛けて、多くの人たちに発信(シェア)してみましょう。生活者の声のなかに、次の投稿コンテンツの答えがみつかるはずです。
●Facebookでの生活者の声の発信例
■自分の話をちゃんと聞いて反応してくれている人がいる。そのことを確認したとたん、人は話しやすくなるもの
プロゴルファーの尾崎将司さんへのインタビューのエピソードを通して「聞く力」ではこのように解説しています。
少しでも「おもしろいな」と思ったら、それを表情や態度でちょこっと話し手に伝えてみてください。聞き手のそういう反応だけで、話の内容はずいぶん違ってくると思います
勇気を持って声を発した生活者に、企業が少しでもいいから反応を示すこと(「いいね!」ボタンはそういうアクションにもってこいですね)。それがソーシャルメディアを活性化させる、またクチコミが伝播するための企業がとるべきアクションであることを教えられます。
「聞く力」が教えてくれる
- 耳を傾けることは、相手を気持ちよくする
- 聞かれた側もまた、語りながら改めて自分の頭を整理して思いも寄らぬ発見をする
- 次の質問を見つけるためのヒントは一つ目の質問に応える相手の答えのなかにある
- 少しでも「おもしろいな」と思ったら表情や態度で話し手に伝える
これらのヒントは企業にとって近くて遠い生活者(お客様)の心をひらくための「聞く技術」です。来年もその技術をより一層磨いていきたいと思います。
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