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海の史劇~日露戦争の現場責任者の苦悩を細かく描いた記録文学

夏っていう季節はボクにとってビジネス運気が減退する季節のようで、7月~9月はなかなかインプット&アウトプットともにモチベーションが上がりません。

20代の頃はそんな状況に勝手に一人で悶々としていましたが、30歳を超えてからはそんな季節は無理せずに行こう。と割り切って、ベクトルをいつもより少し遊びに向けて楽しんでいます。例えば、フジロックやサマーソニックなどの夏フェスで思いっきり発散するのもそのひとつ。それからインプットたる読書も、いつもならばビジネス書を選んでいますが、この季節は長編の戦争モノや日航機墜落事故に関わる小説など、夏ならではの想いや臨場感が感じられる本を手に取って読んでいます。

そんな夏に読む小説の定番というか殿堂入りは、「沈まぬ太陽(山崎豊子)」「クライマーズ・ハイ(横山秀夫)」「坂の上の雲(司馬遼太郎)」です。

沈まぬ太陽はあまりにも有名ですが、7~8年前の夏に一気に読んで。その後も「御巣鷹山編」を中心に何度か読み返しています。会社という組織の不条理と、人災なのか天災なのか、多くの人を巻き込んだ日航機墜落事故の不条理と。今は小さいながらも会社の経営層にいるので、組織の上の気持ちも下の気持ちも汲みつつ悶々としますが、そこで努力する人々の想いと行動を噛みしめて心をかき立たせています。

クライマーズ・ハイは、沈まぬ太陽を読んだ直後に会社の先輩にそんな話をしている中でリコメンドされた本です。ここでも日航機墜落事故にまつわる、組織の不条理を説きつつ、イチ会社員の矜持を目の当たりにする驚きのクライマックスが印象的です。仕事とは成果なのか信念なのか、仕事へのモチベーションが低下ぎみの夏に考えるのはよいタイミングだと思って、時折読み返します。

坂の上の雲。これも司馬遼太郎の代表作であまりにも有名な小説です。東の小国だった日本が大国ロシアと戦った日露戦争における陸海軍の奮闘を描いています。やはり会社の先輩にオススメされました。多くは語らず、信念で行動する。日本男児の生き様を知れというメッセージだったと思っています。超長編なので、長期休暇が取れる新婚旅行中に暑いタヒチのバンガローの上で読みました。夏の物語ではないのですが、そんな暑い中で読んだこと、第二次世界大戦の終戦が夏であること、そんな印象が夏に読みたくなる本なんだと思います。

そして今年の夏に読んでいるのが、坂の上の雲と同じ日露戦争を描く「海の史劇(吉村昭)」です。

史劇というタイトルや記録文学という説明の通り、日本もロシアもどちらかに肩入れする表現は一切なく、両国の視点で淡々と細やかに日露戦争の経過を描いています。だからかっちょいい軍人も出てきません。

バルチック艦隊を率いたロジェストヴェンスキー中将はロシアから日本海へと至る長い航海で、本国からの指示と現場との乖離に苦悩し、落胆し、体も心も蝕ばまれながらもなんとかリーダーシップを発揮しています。

日本海戦のための最低限のピースである旅順攻略の責任者である乃木希典は最後まで苦悩し、リーダーシップを発揮できぬまま児玉源太郎に支えられてなんとか日本は旅順攻略を成し得ました。細かい描写に基づく、戦闘現場の責任者の苦悩が胃をキュっとつままれるように伝わってきます。

神格化されがちな戦争における指揮者のリアルと、小さな砲台や小さな船の説明や顛末まで細かく描かれている描写によって、読んでいて疲れる小説です。でも、目が離せなくなる記録文学です。

半分ほど読み進めて、いよいよバルチック艦隊が日本海へと到着し、東郷平八郎率いる連合艦隊との対決がはじまろうとしています。きっとより細やかな描写で日露戦争のハイライトである日本海戦は描かれているでしょう。いつもより暑いこの夏に、日露戦争の現場の苦悩を最後まで楽しんで読み切りたいと思います : )