ベン・ホロウィッツの「Hard Things」が今多くの経営者の心に染み入るのは、自らの不安を的確に言い当て、ベンの経験に即して軌道修正をしてくれるからです。
マイナスのニュースの扱い方も、多くの経営者が不安を感じながら間違って扱ってしまうファクターです。ベンはこう言います。
自分の中では、プラスを強調し、マイナスを無視することによって、全員の士気を高めているつもりだった。しかし部下たちは、現実が私の説明よりも微妙な状況だと知っていた。しかも彼らは、世界が私の言うようにバラ色ではないことを知っているのに、全社ミーティングのたびに私のくだらない景気付けを聞かされていたのだ。
経営者は自分の胃の痛みは自分の責任であり、ついてきてくれるスタッフにはその痛みを感じさせるべきではないと考えます。それはその通り。でも、スタッフたちの痛みは会社に対する不安です。何かうまくいっていない、そんな不安を薄々と感じることでさえ、彼らの痛みです。
マイナスを無視して、プラスを強調する。という経営者の(自分ひとりで耐えるのだという)自己満足はスタッフたちの心の平穏にはつながらないということ。本当はわかっていながら認められない経営者の気持ちを表現してくれます。
そして、経営者の勇気によってマイナスのニュースが平然と流通する組織となれば、以下のように経営者が望む危機管理意識を持った強い組織に鍛えられていけると実感できます。
健全な企業文化は、悪いニュースの共有を促す。問題を隠し立てせずに自由に語れる会社は、迅速に問題を解決できる。問題を隠蔽する会社は、関係者全員をいら立たせる。CEOは、問題があることを知らせた人を罰してはならない。問題を明らかにした人々に報酬が与えられる文化をつくる必要がある。
ボクのつたない経験の中で、マイナスのニュースをキャッチするためには常時「何もなかった報告」が有効でした。マネジメントする側は時につまらない「何もなかった」の報告に心の平穏を感じます。一方でスタッフに「何もなかった」ことは決してマイナスなことではない。という印象が与えられたら、このまわりくどいコミュニケーションにも価値があります。
ささいな変化をキャッチする方法と、プラスでもマイナスでもその変化を恐れることなく伝播する仕組みをつくること。その価値を改めて感じるベンの導きです。
コメント - comments -