ドライブ・マイ・カー ―― 日本初のアカデミー作品賞ノミネート作品は、生きづらい今を生きる人たちが観るべき作品

アカデミー賞の発表直前ですが、ドライブ・マイ・カーを観ました。

本作は日本映画が初めてアカデミー賞の作品賞にノミネートされた記念すべき一作です。いよいよ本日、オスカーの行方が決定しますが、選評は厳しめですが注目しておきたいと思います。そもそも、アカデミー賞はコンサバな賞レースという評判もあり、全編が外国語(英語以外)の作品はこれまでに10作品しかノミネートされていません。その中で唯一オスカーを獲得できたのは、近年の韓国映画の金字塔である「パラサイト」一作のみです。そのオスカー獲得をきっかけに、韓国のポップカルチャーが世界を席巻していったことを鑑みると、ドライブ・マイ・カーの受賞の行く末にも期待をかけてしまいます。

そんな日本映画にとってもメルクマークになり得る作品ですが、残念ながら映画館で観ることは叶わず、配信プラットフォームでの配信が開始された直後に、ストリーミングで観ることになりました。でも、家で一人で観てこそ、納得できる場面も多かったと感じています。オスカー獲得に期待しつつ、本作の背景、ストーリー、撮影と編集についてまとめておきます。

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ドライブ・マイ・カー ―― 作品の背景について

ドライブ・マイ・カー ―― 作品の背景について

ドライブ・マイ・カーはメンタルヘルスを病んでしまった女性の物語。そして、それによって苦しみを追い続ける家族の物語です。村上春樹の原作をもとにしたストーリーではありますが、2年以上続くCovid-19禍によって、メンタルヘルスを病み、そしてその結果として女性の自殺者が2年連続で増加している現代の社会課題にも重なってくる作品です。それに加えて、ロシアによるウクライナ侵攻がはじまり、世界で「死」に対するリアリティが増す中で、この生きづらい今を、それでも生き続けて欲しいと訴えかけてくるような作品になっています。

もう一つ。多様性を重んじる作品でもあります。多様な人種と障害を持つキャラクターをフックアップし、それを特別なものとせず、当たり前の登場人物として劇中劇が作られ、演じられる様子に心を奪われ、緊張感が続くストーリーの中でも、多様なキャラクターたちがコミュニケーションを交わす場面だけはホっと気持ちを落ち着けられるひとときでした。

こうした2つの側面を鑑みると、今無視できない作品であるとともに、アカデミー賞の賞レースでも注目されるのがうなづける作品とその背景です。

ドライブ・マイ・カー ―― 作品のストーリーについて

ドライブ・マイ・カー ―― 作品のストーリーについて

本作の主なナレーターは2人。舞台演出家の「家福」と、彼のドライバーを務めることになった「みさき」です。両者ともに、メンタルヘルスを病んでしまった家族を救えなかった、見捨ててしまった過去を悔いているという共通点があります。

家福は娘と妻を亡くしています。娘を亡くした妻は、すぐれた劇作家として活躍するも、精神のバランスを崩し、自作に出演する俳優と情事を重ね続けています。家福はその事実を把握しながらも、愛する妻を失いたくない一心でその事実から目を背け、妻と向き合うことをせずに過ごしていました。ある日、妻から話さなければいけないことがある。と告げられる家福。しかし、家福はそれと向き合うことを恐れ、仕事を理由に帰宅を遅らせます。そして、家に着いたとき、妻は心筋梗塞で倒れおり、そのまま亡くなってしまいます。

みさきは母親を亡くしています。シングルマザーの母は、家庭を維持するために水商売で生計を立てていました。まだ幼く、運転免許を持っていないみさきを、仕事への送迎に駆り出します。送迎中でさえ睡眠をとりたい母親は、免許を持たないみさきの運転が荒いと運転席を蹴り上げて怒りを現します。そんな過程を経て、みさきは運転の腕を上げていきます。そんな母も、精神のバランスを崩しています。時折、幼い少女の人格が表に出て、みさきにすがって泣き出します。みさきは幼い少女になった母をなぐさめるのですが、そんな母のその人格が好きでもありました。しかし、ある日、自宅が土砂崩れに巻き込まれ、母親は亡くなりました。その場面で、母を助けに行けなかった自分をみさきは悔やんでいます。

そんな二人が、家福が演出を務める舞台において、演出家とその送迎を担当するドライバーとして出会います。寡黙なみさきと、車内では劇のセリフ回しの録音を聞き続ける家福は、最初コミュニケーションを交わすことはありません。しかし、多様性あふれる劇の関係者や出演者とのやり取りや、トラブルがきっかけとなって、二人は自分たちの過去についてポツポツと語り始めるようになります。やがて、自分たちの気持ちを整理するために、二人で舞台の会場である広島からみさきの故郷である北海道までドライブをすることに。

北海道のみさきの生家にたどり着いたとき、二人はお互いの後悔を吐露し、なぐさめあうことで「それでも生きていこう」と心に決めるのでした。

ドライブ・マイ・カー ―― 撮影と演出について

ドライブ・マイ・カー ―― 撮影と演出について

とても静かな緊張感に溢れる会話劇が中心となる作品です。そんな作品の中で、緊張と緩和のバランスをカメラの視点で表現するのがこの作品の撮影と演出の妙です。車内において、とても近い距離にカメラをおいて、家福のみさきの緊張感と後悔を静かに映し出すカメラの視点。遠くにカメラを置き、広島の美しい風景を、北海道の白く広大な風景を雄大に映し出すカメラの視点。この緊張と緩和が、濱口監督がこの静かな作品においてストーリーの起伏を作り、世界の評価されることになった撮影と演出だと思います。

普段の日常は足早に過ぎていきますが、ふと俯瞰して世界を見渡すと、それはとても生きづらい社会であることに気が付きます。ボクらの毎日の緊張と緩和にも気づかしてくれる作品です。そして、それでも生きていこうと、そんなメッセージを届けてくれる作品です。今、見ておくべきだと思いますし、世界の注目がより集まるように、アカデミー賞の行方にも注目したいと思いました : )

ドライブ・マイ・カー|日本初のアカデミー作品賞ノミネート作品は、生きづらい今を生きる人たちが観るべき作品

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この記事を書いた人

マーケティングに関わる仕事に20年以上携わっています。感銘を受けたポップカルチャーをマーケティング視点で記録したり、日々の暮らしや身に着けているもの、健康・投資について記録するためにブログを活用しています。

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