ITロードマップはNRIが5年後のIT技術を予測しながら、毎年発行している本です。
本書では、5年後を見据えてのキーワードとして「ビッグデータ」や「クラウド・コンピューティング」について詳しく書かれていました。
興味を挽かれたのは、こうした先端技術の普及に際して、サプライサイド(供給側)の視点ではなく、デマンドサイド(需要側)のIT技術の使い方に着目すべきという話です。彼らはそれを「顧客経験価値」を高めることと言います。きっと「プラハラード」の言葉です。
NRIは2007年から、この「顧客経験価値」を高める技術の総称として「エクスペリエンス・テクノロジー」という概念を提唱している。「顧客経験価値」は顧客と企業の接点で生まれるが、現在、顧客接点の多くがIT化されており、企業にとってITチャネルにおける顧客経験価値の向上が大きな課題となりはじめている。そのため今後さらにIT化が進む顧客接点においては顧客経験価値を高めるエクスペリエンス・テクノロジーの適用がますます重要になるであろう。
NRIでは、エクスペリエンス・テクノロジーには「人と会話しているようなインタフェース」、「人にかわって最適な経験を考える技術」、「顧客経験を中心とした開発手法」の3つの要素が必要であると考えている。
(中略)
「人と会話しているようなインタフェース」を実現するためには、スマートフォンやタブレット端末など消費者向けITの活用が不可欠である。また、「人にかわって最適な経験を考える技術」のためには、「ビッグデータ」が重要な役割を果たすと考えられる。技術面から見たエクスペリエンス・テクノロジーの出現は、従来と比べて顧客接点にITが多用されるという企業側の事業環境の変化への対応と、「産消逆転」や「ビッグデータ」の活用といったIT環境の変化の時流に沿ったものと考えられる。
また、「顧客経験を中心とした開発手法」は、顧客を理解したり、最適な経験を創出したりするときに役立つ手法であり、NRIではこれらの手法を総称してエクスペリエンス・デザインと呼んでいる。エクスペリエンス・デザインには、ペルソナ、エスノグラフィ、エモーショナル・デザインなどの手法があり、日本でも注目されている。
上記はIT技術の普及に必要な要素ですが、以下のようにまとめられます。
- 人と会話しているようなインタフェース
→スマートフォンやタブレット端末など消費者向けITの活用 - 人にかわって最適な経験を考える技術
→「ビッグデータ」が重要な役割を果たす - 顧客経験を中心とした開発手法
→ペルソナ、エスノグラフィ、エモーショナル・デザインなどの手法がある
ITがより「人間に近くなる」ことが求められているように思えます。NRIの言うとおりならば、人間の行動を観察するための調査の需要が期待できそうです (^^)