昨年末からゆっくりと、時間をかけながらマーベル・シネティック・ユニバース(MCU)の作品、いわゆる「アベンジャーズ」を公開順に見続けています。
きっかけは田中宗一郎(タナソー)さんのポッドキャスト「POP LIFE:The Podcast」と「2010s」という本。社会の空気感、社会課題を飲み込んで2010年代を横断してエンターテインメント映像作品としてメッセージを続けたアベンジャーズを2010年代の香りが残る今のうちに観て、消化しておきます。
アベンジャーズの主要メンバーがはじめて集うまでの「フェイズ1」を先日このブログでまとめました。今回はメインではないけれど、ユニークで人間味があふれて共感できる仲間が増える「フェイズ2」の整理と、その背景にある社会課題へのメッセージを考えます。
フェイズ2として公開されたのは以下の6作品。(番号はフェイズ1からの通し番号)
07.アイアンマン3(2013)
08.マイティ・ソー/ダーク・ワールド(2013)
09.キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー(2014)
10.ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(2014)
11.アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン(2015)
12.アントマン(2015)
アベンジャーズ後の「宇宙からの脅威による不安」を感じる社会からフェイズ2ははじまり、このフェイズのハイライトである「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」では、Aiが人類を超越するシンギュラリティによる危機が描かれます。このフェイズを通して、人々がなぜAiに期待を求めるのか、頼らざるを得ないのか。その背景の気持ちが透けて見えてきます。
そしてアベンジャーズのメインからは少しはずれたキャラクターと映画「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」と「アントマン」がフェイズ2で登場します。両作品ともに事前知識なく観ましたがすんごく良かったです。
では、個々の作品の感想を整理します。ネタバレ含みますので、未見の方はお気をつけください。
07.アイアンマン3(2013)
最後は開発してきた42体のスーツを総動員しての戦闘シーン。ここは純粋にかっちょ良かったです。結果、スーツを廃棄することを決め、呪縛から逃れたスタークですが、再び巻き起こるスタークの苦悩はエイジ・オブ・ウルトロンにつながっていきます。
08.マイティ・ソー/ダーク・ワールド(2013)
物語はロキの魅力たっぷりの力を使って脅威を退けるのですが、ロキの今後の動向には含みをもたせて終わります。
09.キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー(2014)
敵の姿が見えないテロの脅威と、自分の立場が一夜にして変わってしまう恐怖。高度に張り巡らされた情報監視社会の負の側面を考えさせられる物語です。そして悲しいウィンター・ソルジャー。時代を超えて現代にやってきた彼とスティーブのセンチメンタルな描写はアベンジャーズ作品の中でいつも胸が痛む場面です。
10.ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(2014)
そんなガーディアンズのメンバーのみんなも素敵でしたが、この作品でめっちゃカッチョよかったのが、主人公「スターロード/ピーター・クイル」の育ての親である宇宙海賊の「ヨンドゥ」です。まず、武器がカッチョいい。「ヤカ」と呼ばれる長い針のような矢です。こいつを口笛で操って敵を次々と串刺しにしていく。粗暴なルックスとかけ離れた、エレガントでアートな武器です。
そしてクイルへの親心。だいたいは自分の損得で動くのですが、最後はクイルの嘘にわかって騙されて、それを笑ってすましてあげたり。こういうキャラには弱いです。次作の活躍が楽しみなキャラクターです。
11.アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン(2015)
脅威に対応するため、より安全な生活のためにテクノロジーに頼ったがために生まれる新たな脅威。Aiの知能が人間を超える機会を現すシンギュラリティとの戦いがここでは描かれます。ノア・ハラリが「ホモサピエンス全史」で定義した人間の科学革命によって、必要以上に便利になった人々の生活の行く末を暗示するテーマでもあります。
一方で正義のAiとして登場するのがヴィジョンです。まだ覚束ない人間とのコミュニケーションや、それを通して人の心を学んでいく姿にはテクノロジーの良い側面が描かれています。
加えて、ヴィジョンとともに今回アベンジャーズのメンバーとなった、ワンダ、マキシモフは故郷ソコヴィアを守るためにヒドラの人体実験により人間兵器とされてしまう、兵器問題・格差社会の問題も投げかけています。
それらの背景・問題を爽快に収束・回収するのがアベンジャーズ勢ぞろいの戦闘場面です。各々の背景・不安・人種・問題を集結し、ともに戦うことで薙ぎ払う。我々がリアルに感じる身近な問題も、漠然と不安に思う大きな問題も、そうすれば解消できるのでは。と感じさせてエンディングに向かうのがアベンジャーズの爽快なところです。
12.アントマン(2015)
スコットのキャラクターも好感度が高いです。スティーブのようなシリアスなヒーローよりも、失敗も多かったり、ユーモアがあったり、人間味があふれるヒーローにこそ感情移入が進みます。そんな彼も正義感による行動が原因で、社会からはじかれてしまった格差社会を感じるキャラクターです。スーツを身に着ける決心をしたのも、そんな環境が故の決断でした。
アントマンは格差社会とそれにより望まない資本主義の戦いや兵器問題に身を投じないとならない主人公の物語です。
突然起こるテロや、地球の上の部分はその外の宇宙で起きていること、監視社会の中で自分が見えないところで起きる変化。そんな不安に対応するために人々はテクノロジーを使い、でもそれが行き過ぎるとテクノロジーが人間を力や想像を超えて新たな脅威になっていく。そんな課題を感じる6本の映画でした。
2010年代を締めくくる、フェイズ3も観はじめています。より大きな課題と大きな敵の姿も見えはじめました。一方で、新しいヒーローも含めてアベンジャーズたちが集結することによる力も高まっています。楽しく、ハラハラしながら、でもしっかり噛みしめて締めくくりのフェイズに臨みます : )