佐藤尚之(さとなお)さんのファンベースにおける「エンタメ過剰」というスタンスにとても共感します。
時折、クライアントへの営業提案の差別化のポイントとして「(エンタメ的に)おもしろい企画書にしたい」という営業マンからの相談を受けますが、そんなときに感じる身の丈の弁えがない何とも言えない違和感をうまく表現してくれています。
だって本当に世の中は「エンタメ過剰」で、名の通ったクリエイターでもないし、お笑い芸人でもないボクらが一晩かそこらで考えるおもしろい企画にどれだけの人が振り向いてくれるんだろう。もしかしたら、提案先のクライアントはいいね。と言ってくれるかも知れない。でもきっと、その先の生活者の笑顔をそんな相談をしてくる営業マンが見えているとは思えない。
そんな感覚はずっと持っていて、さとなおさんの前作「明日のプランニング」でも、この「エンタメ過剰」という訴えに大きく首肯したのでした。
http://ryu.jpn.com/archives/3423
エンタメ過剰な世の中でもおもしろいと思えるものは商品愛用者が発信する小さな満足だ
こんなに魅力的なエンタメが溢れている世の中で、キャンペーンやイベントが少しくらいエンタメ化しているとしても、誰が見てくれようとするだろうか。見てくれても覚えていてくれるだろうか。よく、「自社サイトに面白い記事や動画を置いてバズらせましょう」とかいう提案を聞くが、こんな状況下で企業の広告記事を本当に見に来てもらえ、そんな簡単にバズらせられるものなのか、たとえ多少バズったとしても、覚えていられるものなのか、もうちょっと真剣に検討したほうがいいと思う。
本書ではおもしろい企画やコンテンツをこのように切っています。本当に、見てもらうのさえ難しいし、運よくバズったとしてもその情報寿命はとても短いものだと想像ができます。そして、そんな情報が伝わらない環境で情報を伝えるためのヒントを以下のように示してくれます。
一方で、こんな状況下でも、興味をもってわざわざ見に来てくれる人はいる。それは企業やブランド、商品の「ファン」である。新規顧客にリーチするのは至難の業だが、ファンはブランドや商品の動向に注目している。そこに着目することは、エンタメにおいてもアプローチの本筋になるだろう。
クチコミの本質は「伝える人も受け取る人もうれしい情報。だから受け取った人が次の伝える人になる。という好循環が生まれる」ということです。企業とファンとの関係はこの、どちらもうれしい。に当てはまります。だから、ファンに伝えると次につながる。そんなイメージができます。
そして、そういうファンの言葉を以下のように表現しています。
「自分の言葉」を、「オーガニックな言葉」と呼ぶ。オーガニック・フードなどで使われるオーガニック。オーガニック・フード=自然食品、なので、自然な言葉、と訳してもいい。誰かに言わされたのではない、自分の中から出てきた言葉、心からの本音みたいなことだ。
ボクはこの「オーガニックな言葉」という表現にまた腹落ちさせられました。誰かに言わせられたのではない、自分の中からすっとでてきた言葉。定性リサーチの実践をしていく中でも、こうした「オーガニックな言葉」を見つけられた瞬間が一番エキサイティングです。本当の商品の愛用者でしかわからない、すごく限られた場面におけるホメ言葉、オススメポイントがふわっと伝わってきたとき、それはとても楽しいコンテンツに感じられます。
大雑把なエンタメを求めるクライアントや営業マンには「エンタメ過剰だぜ」と言ってやり、こうした商品愛用者の小さな満足が教えてくれる楽しさを、たくさん見せてあげることでファンベースを理解してもらおうと思いました : )
ファンベースに関する記事はこちらです
http://ryu.jpn.com/archives/6643
http://ryu.jpn.com/archives/6676