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クチコミは「スノッブ効果」か「バンドワゴン効果」か。

人間の行動心理に関する小ネタです。以下は東京にある宝飾メーカーの事例です。宝飾メーカーの社長と、コンサルタントとの会話です。

老舗の宝飾メーカーの社長が言うにはは、「わが社の直営店で不思議なのは、一番ボロい店舗の御徒町駅前の店舗が一番売上が良いのです。社内でも理由がわからずに不思議がっています」ということでした。

「それはきっと御徒町という問屋街にある、いかにも一般客相手ではなく玄人相手の雰囲気のするボロい店であれば、掘出し物を安く買えるのではないかと期待されるからですよ。素人の男性客がやって来て、『オレはなんて賢い消費者だろう。外見にだまされず、玄人の目線で割安なものを買えた』と自己満足に浸って喜んでいるのではないでしょうか」

「なるほど……。では、その店舗はどうしたらいいでしょう?」

「もっと、掘出し物感を演出しましょう。お店はさらに質実剛健的に地味にし、店員さんは無口に無愛想に、包装紙は最低限にして省き、シャンデリアは裸電球にしてください。いかにもBtoBで、業界人が業界人に売るような演出をすれば、業界人はだまされなくても、一般人が探検気分でやって来て、楽しんで帰っていくと思います」

豊かになった時代の私たちは、商品にただの機能性だけでなく、美しさでもなく、体験の喜びまでも求めるようになったのです。しかし、それが一番主観に左右されるという面があります。

こうした人間の行動、「私はあの人たちとは違う、だからあの人たちと同じものを買うのは避ける」という効果をスノッブ効果といいます。逆に、「あの人達があの商品を買うなら、私も同じものを買ってあの集団と同じように思われたい」という効果をバンドワゴン効果といいます。

クチコミは、自分と近い関係者の行動によってアクションを喚起されるので、バンドワゴン効果をふんだんに持っているものですが、一方で「私だけに教えてくれる」という体験の喜びを感じることができるスノッブ効果も持ち合わせます。

友人同士の小さなコミュニティでは、コミュニティ内でのバンドワゴンな体験が、その外側にいる人たちとのスノッブな関係を演出できるものと思えてきます。きっとソーシャルメディアではなく、リアルなクチコミだからこそ持ちえる効果です。



Photo by Oscar Chávez!
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