経営やサービス開発の道しるべに、少し先の未来を考えようと取り組んでいます。
ケヴィン・ケリーの「〈インターネット〉の次に来るもの」はテクノロジー界隈の今の技術と少し先の技術を俯瞰して見てみる、考えてみるのにとても参考になります。
彼は人々の行動を12の法則として整理し、こうした行動によってもたらされる未来を「不可避」なものと言います。12の法則は以下の通り。
- ビカミング(なっていく)
- コグニファイング(認知化していく)
- フローイング(流れていく)
- スクリーニング(画面で見ていく)
- アクセシング(接続していく)
- シェアリング(共有していく)
- フィルタリング(選別していく)
- リミクシング(リミックスしていく)
- インタラクティング(相互作用していく)
- トラッキング(追跡していく)
- クエスチョニング(質問していく)
- ビギニング(始まっていく)
いずれの単語も、その意味を少し見るだけで自分の行動や、自分の周辺にあるテクノロジーを表現するときのキーワードであることが理解できます。
以前に自分の嗜好を整理してみて「ミニマル(純化)」「タイト(きちんと合う)」「マッシュアップ(集約)」というキーワードをあげました。その辺りにも通ずる部分があり、興味津々で読み進めています。
http://ryu.jpn.com/archives/2631
コグニファイング(認知化していく)
ビカミングの次のチャプターは「コグニファイング(認知化していく)」。ここではAI(人工知能)の上手な活用方法について解説されています。著者はAIが加えられる対象に対してもたらすアクションを「認知化」と説明しています。
今後のプロダクトの発展に対して大きな期待を寄せられているAIですが、この本ではその期待はまさに正しく破壊的変革をもたらすと予言しています。ただ、そのプロセスは「すべてを変える」大きな力があるものではなく、何の知能もないモノがただちょっとスマートになるだけと言います。そういうちょっとスマートになるの繰り返しによる大きな変革の方が確かに腹落ちします。
そうしたAIの活躍する姿を著者はこのような比喩を用いて説明しています。
これからやって来るAIの未来が見えてくるが、それはHAL9000〔『2001年宇宙の旅』に登場する人工知能〕のような個別のコンピューターに宿る、カリスマのような人間的意識(殺人犯になってしまう可能性のある)でもなければ、シンギュラリティー信奉者が夢見る超知性でもない。いま姿を現しつつあるAIは、どちらかというとアマゾンのウェブサービスのようなもので、安価で信頼性が高く、あらゆるサービスの裏に隠れている実用的でスマートなデジタル機能であり、作動している間はほとんど気づかれることもない。
そして、AIを使いこなすための視点を以下のように説明します。
3世代ほど前には、手先の器用な人たちが、あらゆる道具の電動版を作ることで大金を手にしていった。手押しポンプ? 電気を流そう。手絞りの洗濯機? 電動にすればいい。こうした起業家たちは、電気を起こす必要はなかった──送電線経由で電気を買って、いままで手動だったものを自動化しただけだ。現在は、これまで電化されたものをコグニファイする段階だ。IQをいくらか加えることで、ほとんどあらゆるものが新しく、いままでと違った、より興味深いものになるだろう。実際に、これから起業する1万社の事業計画を予想するのは簡単だ。それはただ、XにAI機能を付けるというものだ。オンラインの知能を加えることで良くなるものを、ただ探せばいいのだ。
AI界隈で起こるビジネスの可能性をとてもカジュアルに言い当ててくれています。きっと地に足ついた技術革新はこうしたカジュアルな視点からはじまります。
以前に手で行っていたもので電化されたもの。それが認知化されることで少し便利になる社会を思い浮かべることは容易な気がしてきます。そんな視点でマーケティング&事業開発を考えてみます : )
http://ryu.jpn.com/archives/5659