2011年はソーシャル元年と言われましたが、そんな一年を代表する本が佐藤尚之さんの明日のコミュニケーションです。
ソーシャルメディア関連の本は昨年たくさん出版され、私もたくさん読みました。ソーシャルな本なので、ソーシャルメディア上でのレビューもたくさん見ました。ソーシャルに注目する人たちのレビューの雰囲気が、この明日のコミュニケーションで変わりました。
明日のコミュニケーション前夜、多くのレビューはソーシャルメディアをテクニカルに語るものでした。明日のコミュニケーション後、それはウェットな感情で紐解かれるものになりました。
もっと言うと、ソーシャルメディアをビジネスに活用するという人々の企てが、ソーシャルメディアは世界を良い方向に導くものになるという希望に変わりました。
それほど、この本で語られる、東日本大震災直後の「助けあいジャパン」のアクションは、インパクトの大きな事例でした。
著者のさとなおさんは、前著作明日の広告でも、同様に素敵な事例とともに、マスメディアとインターネットのクロスメディア展開の可能性を語りました。スラムダンク「あれから10日後」キャンペーンです。
今回、さとなおさんは
震災当日から翌日にかけて、ソーシャルグラフの中の人たちと、ソーシャルメディアを使って会話・企画て、一週間もたたずに政治家や国を動かした事実とともに、ソーシャルメディアの可能性を説きました。
それは、ソーシャルメディアの可能性を信じる人たちの希望になりました。
またさとなおさんが、ソーシャルメディアの可能性を深化させていきながらたどり着いた、新生活者行動モデルも興味深いものでした。さとなおさんは、それをSIPSモデルと呼ばれるモデルです。
このモデルで、生活者の最初のアクションをSympathize=共感するとしています。AIDMAからはじまり、AIDA、AISASと再考され続けた生活者行動モデルから、はじめてAttetion=認知という、生活者の受身のアクションを解放しました。
AIDMAの誕生から、およそ100年。インターネットが一般家庭に普及して10余年。はじめて生活者の能動的なアクションからはじまる行動モデルが日本で誕生しました。これをもってこそ、日本における「ソーシャル元年」と言えるのではないでしょうか。
もっともっと生活者の能動的なアクションを促進するために、これから企業は、話すことではなく聞くための技術を磨きます。「聞く技術」を用いて、生活者の「共感を集める」ことが、ソーシャル時代の企業のマーケティング・アクションになります。
世界が変わる、マーケティングが変わる。そんな高揚感とともに、ソーシャル時代の到来を高らかに謳った2011年随一の一冊でした。