世界の経営者が、この2015年に数多く参照しているであろうベン・ホロウィッツの「Hard Things」。遅ればせながら読み始めました。
ボクはまだまだ経営初心者ですが、迫りくる困難と決断の連続に。心臓や胃をキュっと鷲づかみにされるような。そんな気分を味わっています。さながら、池井戸潤の小説のような苦闘と逆転のストーリー。ただし、事実は小説よりも奇なり。物語にしてしまうとケバケバしいほどに、Hard Thingsが襲い掛かります。
ベンはそうした経営の道を「苦闘」と表現します。数限りない苦闘をリアリティある言葉で吐露します。
苦闘とは、そもそもなぜ会社を始めたのだろうと思うこと。苦闘とは、あなたはなぜ辞めないのかと聞かれ、その答えを自分もわからないこと。苦闘とは、社員があなたはウソをついていると思い、あなたも彼らがたぶん正しいと思うこと。
苦闘とは、料理の味がわからなくなること。苦闘とは、自分自身がCEOであるべきだと思えないこと。苦闘とは、自分の能力を超えた状況だとわかっていながら、代わりが誰もいないこと。苦闘とは、全員があなたをろくでなしだと思っているのに、誰もあなたをクビにしないこと。苦闘とは、自信喪失が自己嫌悪に変わること。苦闘とは、苦しい話ばかり聞こえて、会話していても相手の声が聞こえないこと。苦闘とは、痛みが消えてほしいと思うとき。苦闘とは、不幸である。苦闘とは、気晴らしのために休暇を取って、前より落ち込んでしまうこと。苦闘とは、多くの人たちに囲まれていながら孤独なこと。苦闘は無慈悲である。
苦闘とは、破られた約束と壊れた夢がいっぱいの地。苦闘とは冷汗である。苦闘とは、はらわたが煮えくり返りすぎて血を吐きそうになること。苦闘は失敗ではないが、失敗を起こさせる。
私が短い経営経験の中で胃をキュっとつかまれたように感じた場面は「苦闘とは、自分の能力を超えた状況だとわかっていながら、代わりが誰もいないこと。」です。不退転という言葉が不必要なほど、経営では自分が避けてしまったらすべてが崩れるという場面がやってきます。
すべてを受け止めて決断する。その具体的な事実が本書には詰まっています。小説よりもハラハラと心をキュっとさせられながら、読み進めます。