Spotifyのポッドキャスト「POP LIFE」の最新シリーズのゲストは毎回鉄板のアベンジャーズメンバー、POP批評三悪人の宇野惟正さんと柴那典さんがゲスト。
ホストの田中宗一郎(タナソー)さんと三原勇希さんと、今回はインターネット黎明期から発信を続けてきた柴さんをフィーチャーして「インターネット」界隈とポップカルチャーをクロスオーバーしながらの話題がテーマでした。
本シリーズのボク的ハイライトは柴さんから「橘川幸夫さん」と「ハンス・ロスリング(ファクトフルネス)」の発言が出たこと。両者ともにマーケティング(デジタル系ではない)に携わるボクに影響を与えてくれた人たちで、柴さんはマーケティング界隈の情報もキャッチアップし、それらを背景に持ちながらポップカルチャーについて批評していることを垣間見ることがでいて、その視点にとても共感しました。
そんなハイライトな話題の周辺で感じたことを記録しておきます。
橘川幸夫:インターネット前夜から「参加型メディア」を志向し作り続けるマーケター
橘川幸夫さんは渋谷陽一さんとともにロッキング・オンの創刊に携わった人です。前述のPOP批評の三悪人は全員「ロッキング・オン」出身で、そんなバックボーンについて話をするときに柴さんは「ボクは渋谷陽一イズムではなく、橘川幸夫イズムを継承している」と話します。
その出発点は橘川さんが1978年に創刊した「ポンプ」という読者の投稿だけで作られた雑誌で、その思想やアーキテクトの方法がとてもインターネット的だったことに感銘を受けたことがきっかけでした。
橘川さんは今でも「デジタルメディア研究所(デメ研)」という会社の所長(社長)を務め、ずっと「参加型メディア」を志向し、作り続けています。商品開発のための調査やマーケティングを実践することもあり、ボクが務める会社とも所縁が深く、ボク自身も橘川さんが主催するセミナーに登壇させていただたこともあって、PopLife:ThePodcastの中で橘川さんが取り上げられること、その功績が称えられることに興奮しました。
2010年代を振り返るときに頭にいれておくべき、ハンス・ロスリングの「ファクトフルネス」と別の2冊
音楽ジャーナリストでありながら、ハンス・ロスリングの「ファクトフルネス」までキャッチアップしているところに柴さんの視点の広さを実感します。さすがにタナソーさん、宇野さんもフォローできていない様子でした。ポップカルチャーと並行して格差問題や気候変動など社会課題も絡めて会話が進むところがPopLife:ThePodcastの好きなところですが、00年代や10年代のカルチャーを紐解く上でこうした統計学的、マーケティング的視点が入るとグッと腰が入った議論になります。
https://ryu.jpn.com/archives/9765
それから、ケヴィン・ケリーの「インターネットの次に来るもの」とナシーブ・タレブの「反脆弱性」もこの10年~20年を振り返るにあたってフォローしておくべき情報だと思います。柴さんは2000年代(細かくは1995年のWindow95の発売から00年代ははじまったという解釈)はインターネットによって壊される、壊してきた10年と言い表しました。
その頃、ボクはまだ10代と20代で。世界中の情報にアクセスできたり自ら発信できることの喜びと、民衆の力によって権力者の不都合が事実が明るみになること、権力が壊れていくことに興奮を覚えていました。00年代は怖くてエキサイティングな10年だったと感じています。ファクトフルネスに加えて、ケリーとタレブの本も力を得た民衆と彼らが使い使われるテクノロジーの来た道と行く道を示してくれています。
https://ryu.jpn.com/archives/5659
https://ryu.jpn.com/archives/6009
柴さんがインターネットや橘川幸夫やハンス・ロスリングとポップカルチャーをクロスオーバーして話をしてくれたおかげで、2020年代にボクが実践したいマーケティングの輪郭が見えてきた気がします。よいモノづくりと、それらをよりよく伝えるためのシクミを考えるためには、生活者と社会課題とそれらがよりよく伝わるためのアウトプットとして出現するポップカルチャーを横断して観察してくべきだと感じてきます。
マーケティングに活かすポップな情報を浴びるために今一番のよい手段がPopLife:ThePodcastだと思っています。紙の文章ではなくて、Webの文章でもない。もちろんTVでもなくてPodcastというフォーマットで届けられるこの情報が今はとても貴重で、来年もこれからもマーケティングに活かせる情報を探しながら聴き続けます : )