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使える弁証法|改めて読むと矛盾を止揚せよ。という言葉が胸に響いてくる。

使える弁証法|改めて読むと矛盾を止揚せよ。という言葉が胸に響いてくる。

田坂広志さんの「使える弁証法」は2005年に出版されました。ボクがはじめて手に取って読んだのもその頃だと思います。

ヘーゲルの弁証法の活用方法を「物事は螺旋的に発展する」と説き、シンプルに未来の進み方を考える上でとても参考になる良書です。その教えはいつでも心の中にありますが、今回仕事でアイデアの発想方法を整理する上で改めて頭から読み返しました。心に留まった良書を期間を置いて読み直すことはとても価値があることですね。今回はまた違った景色が見えてきました。

使える弁証法の5つの法則

本書では弁証法の実践での活用に際して5つの法則を示しています。

  1. 事物の螺旋的発展の法則
  2. 否定の否定による発展の法則
  3. 量から質への転化による発展の法則
  4. 対立物の相互浸透による発展の法則
  5. 矛盾の止揚による発展の法則

がその5つです。これまでは第1の「螺旋的発展の法則」がとても分かりやすく、かつ実践で活用しやすいこともあり、ずっと心に留めておいた法則でした。2~4はその実践活用の具体例としての法則だとボクは理解しています。で、今回改めて読み返して心に響いてきたのが第5の法則である「矛盾の止揚による発展の法則」です。

本書ではその第5の法則を「その他の法則の根底にある、最も基本的な法則である」と説明しているのですが、これまではあまり意識していませんでした。こんな説明が心を打ちます。

我々の生きている世界は、「矛盾」に満ちている。そして、「矛盾」とは、発展の「原動力」であり、世界の「生命力」のことなのです。だから、我々の生きている世界は、変化し、発展し、進歩し、進化していくのです。それゆえ、我々は、その「矛盾」を、ただ機械的に「否定」すべきではない。我々は、その「矛盾」を、弁証法的に「止揚」していかなければならないのである。

歳を重ねて立場が変わるとたくさんの矛盾の矛先が自分に向かって上がってきます。そんなとき「判断・決断しなくてはいけない」と身構えていましたが、矛盾とは割り切って決断しなくても良いものだと言ってくれていて、救われる気持ちになります。

「割り切らない」それが、「矛盾のマネジメント」の要諦です。なぜなら、こうした「矛盾」に対して、それを機械的に「割り切って」しまうと、生命力が失われてしまうからだ。では、「止揚」とは、何か。それは、互いに矛盾し、対立するかに見える二つのものに対して、いずれか一方を否定するのではなく、両者を肯定し、包含し、統合し、超越することによって、より高い次元のものへと昇華していくことである。

そして「矛盾のマネジメントとは割り切らないこと」だと言います。矛盾は止揚すること、止揚とは両者を統合し超越することだと説明しています。これはこれでとても大変で難しいことです。でも「聞く力」がボクの能力だと思っているので、決断よりも統合の方が得意な気がします。

矛盾する声がたくさんあったとしても、それを真摯に聞き、割り切らずに、振り子のようにバランスを取りながら、肯定・包含・統合することでより高い次元の解へと導いていく。そんな風にアクションし続けようと勇気が持てました。14年前と同じように、改めて大切な示唆をもらえた本書でした。またいつか読み返します : )

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