マーケティングリサーチのスクールの記録です。今回は標本調査の設計について。また設計時における注意点として代表性や誤差について学びました。基本的なことですが、改めて知識として吸収すると意外と知らないことも多く、ハラハラします (^^;)
学んだことの中で、参考になる寓話と。受講者の同僚であるアミューズメント施設の運営会社から教えてもらったアミューズメント施設の調査におけるセグメントと、代表性にこだわったサンプル抽出方法が興味深かったのでメモしておきます。
セクション・バイアスに関する「戦闘機」の寓話
意思決定時に無意識でバイアスをかけてしまった興味深い事例です。
第二次世界大戦におけるアメリカ軍関係者の会議で、戦闘機の改良・補強についての話が持たれました。会議の資料として、実際に戦闘から帰還した全戦闘機の被弾に関するデータが提出されました。
データの検証が行われ、戦闘機のある部分だけが特異的に被弾している割合が高いことが判明しました。そこで、軍の最終的な結論としては「この被弾する割合が高い部分を集中的に補強しよう」ということになりました。
さて、この判断は正しいでしょうか?
答えは「正しくありません」。この決定にはセクション・バイアスという偏りがあります。
届けられたデータは、戦地から帰ってきた戦闘機に関するものばかりで、撃墜されて帰ってこれなかった戦闘機に関するものがありません。致命傷となる部分に弾丸を受けた戦闘機は帰ってくることはできずに、大事には至らない部分に弾丸を受けた戦闘機は帰ってくることができたと言えます。
データの母集団が導き出したい結果に対して適当な母集団か否かを選択する際の間違いです。
あるアミューズメントパークではタイムサンプリングで毎日90票の来園者調査を実施する
あるアミューズメントパークが設定サンプルを決めるときに最も重視するのが「ユーザレベル」だそうです。サンプル数の割り付けは性別や年代ではなく「年に何回パークに訪れるのか」で設定されます。以下のように定義されています。
- フレッシュユーザー:1回未満/年
- ライトリピーター :2回~4回/年
- ミドルユーザー :5回~9回/年
- ヘビーユーザー :10回~12回/年
- マニア :13回以上/年
また、来園者調査を積極的に行っており、毎日90票を来園者から聴取します。その方法は、代表性の担保にこだわり、偏りをなくすために「タイムサンプリング」にて集めます。
- 8時~22時の開園時間のうち
- 1時間ごとに来園者構成比を割り当てて
- 構成比通りにサンプル数が集まるまで
- 1時間のスタートから一人目に声をかけて
- 以後30秒ごとに声をかけていく
という方法を毎日繰り返しています。彼らの基幹である大切な来園者データの偏りやばらつきを排除するために、多くの労力と工夫を払っています。
ライトなマーケティングリサーチでは、ここまでの議論になることは少ないかもしれません。ここまでこだわれてしまうと大変という側面もありますが。。ただ、標本調査における代表性と誤差の考え方や、そこに払われてきた労力に関しては頭の片隅にいれつつ、クライアントにとって価値あるデータを収集できるように企画や設計を進めたいと感じました。