映画「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」を観ました。MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)のフェイズ4を締めくくる作品。そして、前作では圧倒的な主人公として振舞ったチャドウィック・ボーズマンを亡くした後のブラックパンサーの世界がどう描かれるのか。今年もいろいろ観たMCU作品の締めくくりとしてとても期待をしていた作品です。
劇場はもちろん気合を入れて、グランドシネマサンシャイン池袋のIMAXレーザー/GTテクノロジーで。IMAX3Dで観てきました。ただ、このタイミングでは同日に公開を迎えた「すずめの戸締まり」がヘビーローテーションされていて、IMAXの劇場でのブラックパンサーの公開回数が少なく、タイミングを合わせるのが大変でした。。そんなブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバーを、背景・ストーリー・撮影と編集の視点で記録しておきます。スポイラー(ネタバレ)気にせずに書いてしまうので、気になる方はお気をつけください。
ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー ―― 作品の背景について
新世代のブラックパンサー「シュリ」は、本作にて伝統に抗い、科学と科学者を信じ、海の民と戦うZ世代の女性です。これらの言葉を並べてみると気が付くことがあります。現実の世の中でも、伝統に抗い、科学者を信じ、洪水を起こさないように戦おうと叫ぶZ世代がいます。気候変動活動家の「グレタ・トゥーンベリ」です。シュリはハーブを飲み、ブラックパンサーの力を宿すときに「復讐を果たすのか」もしくは「気高く生きるのか」と問われます。そこでシュリは一度「怒り」で動くことを心に決めます。グレタの原動力も怒りです。そんなところから、グレタ・トゥーンベリからのリファレンスを感じずにを得ないシュリの背景を感じました。本作の最後でシュリは「怒り」を抑えて「気高く生きる」選択をします。グレタにもいつか怒りが収まり、心穏やかに過ごせるときが来ることを祈りたくなりました。
もうひとつ。本作ではヴィブラニウムを巡った、ワカンダとタロカンの争い、戦いがメインのストーリーとなりますが、本当にワカンダが戦っていたのはタロカンなのか。そう疑いたくなります。ワカンダとタロカンを追い詰め、両国が争うことになってしまった背景には、先進国による搾取の構造があります。ヴィブラニウムという資源を我がものにしようと近づく権力者たちが、争うべきではない国同士の争いを引き起こし、そして搾取の構造を創り出していくこと。もしかしたら、今現在進行中の戦争の背景にあるもの、構造を改めて考えてみないととさえ思わされる作品でもありました。
ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー ―― 作品のストーリーについて
本作のナラティブはシュリ。作品は兄である「ティ・チャラ/先代ブラック・パンサー」が死を迎える場面からはじまります。冒頭から大きな存在を失ったシュリですが、彼女が失うものは兄だけではありませんでした。ブラック・パンサーを失ったワカンダは、彼の母「ラモンダ」が王を務め、世界各国からのヴィブラニウム資源を解放しろという要求と戦っていました。ティ・チャラのもと、開国と分配を宣言したワカンダでしたが、それはブラック・パンサーがいてからこその前提になりたつ決定でした。
ブラック・パンサー亡きあとは世界各国から搾取の対象として資源を狙われる国となっていました。ヴィブラニウムを求める熱狂は加速を続け、若い科学者「リリ」が発明したヴィブラニウム探知機を権力者が握ることになります。これによって見つけられてしまったのが、以前のワカンダのように世界から隠れて生きてきた海底国家タロカン。彼らもまたヴィブラニウムを資源として保有する国でした。
世界に存在をさらされてしまったことに怒るタロカンの王ネイモアは、科学者リリに怒りの矛先を向けます。同世代であり同じ科学者でもあるシュリはリリを守ること。科学を守ることを決断します。そのシュリの決断により、ワカンダとタロカンの両国の間でも争いに発展してしまいます。ワカンダに侵入したネイモアは、ラモンダを殺害。シュリは兄につづき、母までも失ってしまうことになります。多くのものを失ってしまったシュリ。これ以上、何も失わないために新世代のブラックパンサーになることを決めます。
ブラックパンサーの力の源であるハーブを失っていたワカンダですが、タロカンのヴィブラニウムの力を蓄えた海藻を使い、ハーブを完成させます。ブラックパンサーとなったシュリは、「エムバク」に止められながらもタロカンに母の復讐のために戦うことを決意します。シュリが開発したスーツを身に着け、アイアンハートとなったリリ、そして「ミッドナイト・エンジェル」となったオコエとともに戦い、ついにネイモアを追い詰めます。
ネイモアを殺し復讐を果たそうとするそのとき、シュリの脳裏に浮かんだのが母ラモンダであり彼女の「あなたが誰であるか示しなさい」という言葉でした。シュリは矛を収め、ネイモアにワカンダとタロカンの同盟を持ち掛けます。ヴィブラニウムを、資源を搾取しようとする国々たいしてともに戦おうと、互いが戦う相手を見つめなおして、ワカンダとタロカンの戦いは終結しました。
ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー ―― 撮影と編集について
機敏でしなやかなシュリ版ブラックパンサーが本当に美しくかっこよい映画でした。ヒーローとしてのシルエット、戦い方のすべてが素敵で、これから最も応援していきたいヒーローになりました。戦闘シーンは山と海。先代ブラックパンサーの時から、四肢の屈伸と跳躍がダイナミックに繰り返される戦闘シーンがとても好きでしたが、スーツを着たシュリのシルエットはその要素を増幅させて、よりかっこよく魅入らせる戦闘シーンでした。そして、IMAX3Dで見たこともあり、この後12月に公開される「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」が脳裏にチラつく撮影と編集にもなりました。