この週末は再び北米で燃え上がっている「ブラック・ライヴズ・マター(BLM)」の活動に対する日本におけるリアクションを良く耳にしました。
コロナ禍の5月25日の北米ミネソタ州ミネアポリスで起きた、警察官によるジョージ・フロイドさん殺害事件に端を発する今回のBLMの活動は、黒人の人権を主張する活動に加えて「制度を変えろ。警察組織を解体しろ」といった具体的な提案が訴えられている点において、これまでの活動より一歩踏み込んだ内容になっています。
アメリカの建国以来、人種差別・格差社会の問題は世界をリードする豊かな国であるアメリカの最も大きな社会課題です。カラードはずっとこの問題を訴え続けてきましたが、人の心はなかなか変わりません。だから制度を変えるんだ。そんな具体化した訴えが、もしかしたら今回こそ400年続いてきたこの国の因習を変えていくのでは。そんなオピニオンが渦を巻いています。
ボクは人種差別や格差社会の問題に対して特別詳しくもなく、特別なオピニオンを持っているわけではないのですが、ずっと永い間、もう30年近くもこの話題を見聞きすると心がザワつくのです。その背景にあるのは、レゲエ・ミュージシャン「ボブ・マーリィ」です。中学の時に音楽の先生の勧めではじめて聴いたレゲエとボブ・マーリィ。浮ついたダンス・ミュージックを想像していたけれど、流れてきた美しいバラードと優しい歌声に思わずライナーノーツを手に取り衝撃を受けます。
そこで唄われていたのは、虐げられてきたジャマイカの人々の傷を癒すためのリリックであり、優しく強く戦おうと、変えていこうと訴えるリリックでした。BLMのムーブメントに対してのリアクションを、今でも多くのミュージシャンが歌やラップにのせて訴えています。それらのメッセージに心を打たれる同時に、そんな時にはいつもボブ・マーリィのメッセージを思い出します。
今よりもっと差別がはびこっていた時代に、ジャマイカという厳しい環境の中で唄われたボブ・マーリィのリリックを、改めて振り返って、今の空気とともに記録に残しておきたいと思います。
400年。人々の考え方は変わらなかった。いいかい。400年もなんだ。いまだに真実が見えていないのさ。♪400years| via Catch A Fire | https://t.co/e62wNm5U1f
— Marley Live! (@marley_live) June 2, 2020
まさに今も変わらず400年間虐げられてきた人々の歴史の話。何度も繰り返し問題は提起されたけど、でも人々の考え方は変わらなかった。彼はそう唄います。
この世に不公平がある限り、自由を語るんだ。自由と解放を。♪Babylon System| via Survival | https://t.co/Hf0r8Du3Es
— Marley Live! (@marley_live) July 3, 2020
「バビロン」は苦しむ人の生き血を吸うヴァンパイアのこと。それらが作ったシステムはずっと不平等なものだった。だからこそ、彼は自由を語りました。自由と解放を唄い続けました。
おまえがでかい木なら、オレ達は小さな斧だ。準備はできた。おまえを切り倒すため鋭く研ぎ澄まされている。♪Small Axe| via Burnin | https://t.co/TbP7z6OqwL
— Marley Live! (@marley_live) May 28, 2020
バビロンを大きな木に。それに苦しむ者たちを小さな斧に例えた、素晴らしいメタファーです。BLMは大きな木を切り倒すために鋭く研ぎ澄まされた者たちの訴えなのかもしれません。
オレはナッティ・ドレッド。ドレッドロックを振りかざす自由の戦士。バビロンに生きるナッティ・ドレッド。オレは自由の戦士なのさ。♪Natty Dread| via Natty Dread| https://t.co/KPGyICYdhO
— Marley Live! (@marley_live) July 2, 2020
BLMは自由の戦士たちの戦いなのかもしれません。もしそこに不埒な心で中途半端に介入する人たちがいるのであれば、それはやめて欲しい。ナッティ・ドレッドの戦士たちの正しい戦いをしっかりと見つめていたいです。
生き残るのはオレたちだ。黒の生存。生存者はオレたちだ。ライオンの檻から生きて出たユダヤの予言者ダニエルのように、オレたちは生き残る。♪Survival| via Survival | https://t.co/Hf0r8Du3Es
— Marley Live! (@marley_live) June 27, 2020
ブラック・ライヴズ・マター(黒人の命も大事)だと訴える人たちに、だからこそ生き残って欲しい。ボブはずっと、今でもそう唄っていると思います。
誰が本物の革命家なのかは、すぐに分かるだろう。キミもアフリカ人なら、この革命の邪魔だけはしないでくれ。♪Zimbabwe| via Survival | https://t.co/Hf0r8Du3Es
— Marley Live! (@marley_live) June 19, 2020
植民地から解放された「ジンバブエ」の建国記念式典で唄われた歌です。ジャマイカのレゲエ・アーティストはかの国の建国に際して、イギリスの皇太子と同列の席に座り、そしてこの歌を贈りました。革命を邪魔するなとボブは今でもきっと唄っています。
鎖にはつながれていないけど、オレは自由なんかじゃない。ここでは囚われの身なんだ。♪Concrete Jungle| via Catch A Fire | https://t.co/P2UUjMeGuS
— Marley Live! (@marley_live) June 26, 2020
北米におけるカラードは今でも「鎖にはつながれていないけれど、自由なんかじゃない」というのが実情なのでしょうか。警察官に目をつけられないように、理由なく傷つけられないように息をひそめている。今回のBLMの背景として聞こえてきたカラードの生活です。
素敵な友達がたくさんいたんだ。でもみんないなくなってしまった。忘れろったって無理な話だけど、でも未来は明るいんだ。さぁ、涙を拭いて。♪No Woman No Cry|via Natty Dread| https://t.co/w9dN5Ku7iE
— Marley Live! (@marley_live) June 25, 2020
大好きな大好きな「ノー・ウーマン・ノー・クライ」の一節。普通の日常として、友達を失ってしまう社会。それでも未来は明るいと優しく励ましてくれるボブの歌声。今だからこそ、多くの人に聴いて欲しい一曲です。
起きあがれ。立ちあがれ。正しきもののために立ちあがれ。起きあがれ。立ちあがれ。権利のために立ちあがれ。起きあがれ。立ちあがれ。あきらめず闘うんだ。♪Get Up, Stand Up| via Burnin | https://t.co/9NqX7zGwyM
— Marley Live! (@marley_live) June 30, 2020
あまりにも有名な闘争の詩、革命の歌。権利と正しきもののために立ち上がる人たちに贈りたいです。
誇りをもって、唄ってほしい。この自由の歌を。だってオレが唄ってきたのは、すべて救いの詩なんだ。♪Redemption Song| via Up Rising | https://t.co/eBukHF5nzg
— Marley Live! (@marley_live) June 30, 2020
リデンプション・ソング、解放の歌。それは混乱のための活動ではなく、救いのための歌だと彼は言います。だから誇りを持って唄って欲しいと。ボブは正しきもののために、人々の心に火を灯す歌を唄いますが、過度に暴力や混乱を煽ることはしませんでした。逆に「落ち着けよ(シマー・ダウン)」と唄うこともあります。過熱するブラック・ライヴズ・マターのムーブメントの最中だからこそ、多くの人たちにボブ・マーリィの歌とリリックを思い出して欲しいと願います。
上のツイートはすべて、ボクが2010年5月にはじめたボブ・マーリィのリリックをつぶやくためのアカウントから引用したものです。ボブ・マーリィに関するブログはさらにその以前から書いています。永い間、彼の音楽を聴き、リリックに触れていますが、今だに心を揺さぶられます。そして、今回のBLMのような出来事が起こるたびに思い出し、また自分の人生の節目節目でも思い出しては勇気づけられています。
これ以上、傷つく人が増えませんように。多くの人が正しい権利を持ち得ることができますように。そう願っています : )